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二宮くんが私の腕を掴んだ。
「離して」
「A」
「もう、どうでもよくなっちゃった」
あはは、と笑ったら二宮くんが怖い顔をしたまま私を見下ろした。
「もうどうでもいい」
「どうでもいいって何」
「生きてくのも嫌になっちゃった」
「……何言ってんの……」
「もう嫌だ……」
「A」
「もういいの、もうなんだか生きるの疲れたよ、もういいや」
「A、落ち着いて」
「落ち着いてるよ、いま、今日一番落ち着いてる」
「……」
「誰も憎みたくないから、自分がいなくなればいいんだ、それがきっと一番楽なんだよね」
「……」
「消えたい……二宮くん、私を消して……」
「A」
「消えたい……もう、やだ……」
「どうする？この姿、見せる？」
「……え？」
「ボロボロに傷ついて、涼ちゃんがいないと死んじゃうって、この姿涼ちゃんに見せる？」
二宮くんが初めて見るくらいの真剣な顔で私を見つめた。
「取り返せるよ、今なら」
「……」
「あのAが。あの強くてかっこいいAが自分見失うくらい動揺して、涼ちゃん返して、って泣きながらすがりつくの」
「……」
「そんなに俺のこと好きだったんだって涼ちゃんは感動するだろうし、そのまま結婚しようって言うよ、たぶんね、どうする？」
「……取り戻せるの？」
「今ならね。行く？」
「……」
「行く？」
「……え」
「行くの？行かないの？どっち！早く決めて！次のチャンスは俺付き合ってあげらんないよ！」
……二宮くんは。
私に付き合ってくれてたの？
……自分のためじゃなくて？
「……二宮くんはどうするの？」
「俺はもう優奈なんていらない」
「……」
「あんな女いらない。今度はもっといい女選びます」
「え」
「だって！浮気する奴はどうせまた浮気するもん。賭けてもいいよ？浮気は治んない」
二宮くんが凄絶なほどの冷たさで私を見た。
「許す？」
「……」
「許すの？」
「…………許せないよ……！」
「……」
「死んでも許さない、もし結婚してもまた浮気してんでしょ？って一生そんな目で見る、私」
「うん」
「許さない。そんな男、こっちから願い下げだわ！……私が捨ててやる」
「……ふふ」
「見損なったわ、ガッカリよ」
「……」
「あんな奴、もういらない！」
二宮くんがあは、って笑った。
「それでこそAだよ、いつものかっこいい南さん」
「ほんと？……かっこいい？」
「うん、惚れそう」
二宮くんが楽しそうに笑った。
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2017年3月31日 8時
