20 ページ20
駅に向かったら、グレーのまま、見なかったことにしてもいい。
けど、涼ちゃんちに向かったら私は。
小さな賭けは、簡単に砕けた。
優奈ちゃんが涼ちゃんの腕にぶら下がるみたいに腕を組んで、涼ちゃんも嬉しそうに自分ちに向かってる。
ねえ、待って？
合鍵とか貰ってないけど私が家の前で待ってる可能性考えなかったの？
っていうか、私のクレンジングとか化粧品とかパジャマ代わりの部屋着とか置いてあるんだけど、そんなとこに優奈ちゃん連れて行くの？
優奈ちゃんは平気なの？
え？いつから？
もしかして、先週涼ちゃんちに泊まった時……
あのベッドで……
ぐらり、視界が歪む。
10分ほど歩いて、涼ちゃんのマンションに二人が入っていく姿を見て、立ってるのがやっとで、ふらふらしながら自販機に手をついた。
二宮くんは黙って私の後ろについてきていて、手も繋がずに、少し離れたところでスマホを眺めてる。
私は、動けないまま、逡巡してる。
乗り込んでやろうか、電話をかけてやろうか。
刃物持って暴れる？
それともその道路に飛び込んで事故死してやろうかしら。
俺の浮気を見て、Aは、自ら死を選んだのかもしれないって後悔させて、二人に消えない十字架背負わせてやろうか。
絶対に二人が幸せにならないように呪詛を吐きながら目の前で死んでやろうかしら。
そう思うだけで行動に移せないまま、自己嫌悪の吐き気をこらえる。
しばらくしたら、涼ちゃんからラインが届いた。
『今日帰れないかもしれないから、そのへんに泊まる、気をつけて帰れよ』
どうして？
どうして嘘つくの？
嘘をつくということは私とは別れたくないということ？
気をつけろ？
今死にそうなんだけど助けに来てくれるの？
変な優しさなんていらない。
冷たく、こっぴどく、ひどい捨て方してよ！
お前より優奈がよくなったんだって
もうお前のことなんて愛してないって
お前なんかいらないって
私を壊せばいいじゃない！
優しさなんていらない。
残酷だ。
酷い。涼ちゃんは酷い。
憎まれるのがそんな怖い？ねえ？
気づかないうちに涙が溢れていて、スマホを握りしめたまま、涼ちゃんの部屋の電気を見つめるしかできなくて。
もう嫌だ。
嫌だ。
何もかも嫌になった。
自分が嫌になった。
ふらふらと、自分の家に向かって歩きだしたら、二宮くんがついてきた。
「どこいくの」
「帰る」
「送るよ」
「いい」
「A」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 4412人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2017年3月31日 8時
