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「愛したことを無駄にしたくないよ……憎むほうが楽だよ、そっちのほうが楽なんだけど」
「うん」
「誰かを攻めて、死ねとか殴ってやりたいとか爆ぜろとか禿げろとか悪口いうのは楽だよ、だけどぽっかり空いた穴を悪意で埋めてどうするの？そのあとそれはどうなるの？」
「……」
「楽しかった日々とか貰った幸せとかを全部否定して、大切な日々を無駄な時間だったって否定して生きていくの？そんなのやだよ」
「そだね」
「……大好きな人を大好きなまま終わらせる方法教えて……」
二宮くんが泣いてるみたいに目が潤んでて、綺麗だなぁって思って、
まだ、綺麗なものを綺麗って思える自分がいるって気づいてホッとした。
「ねえ」
「ん？」
「ねぇ、A？」
「ん？」
「涼ちゃんは幸せだね」
「え？」
「Aに愛されて、幸せだね」
「……」
「涼ちゃんは、きっと素敵な彼氏なんだね」
「……」
「俺飲み屋とかで元カレの悪口を肴に酒飲む女とかと席隣になったりしたらもう怖くてさー」
「え？なにそれ」
「馬鹿だとか、早いとか下手くそとか、ケチとか色々ね、まぁ出るわ出るわ悪口。けどね、そんなバカ男と付き合ってたんだなこの女って思っちゃうわけ」
「……」
「好きだった人の悪口言うのは自分を傷つけてることだと思う、だからAはいい子だなと思った、素直に」
「……でも、やっぱり、顔見たら、爆発しろって思うと思うし……」
「そりゃ仕方ないよ……」
二宮くんが頭をワシワシなでてくれた。
「好きだった分、しんどいのは仕方ないよ」
「うん」
「あのね、A」
「ん？」
「実はね、俺、あの二人が浮気してんじゃないかなあっての、先月くらいから気づいてて」
「え！」
思わず顔を見る。
「疑惑なだけだよ？涼ちゃんが前言ってたことと同じこと優奈が言ってて」
「……例えば？」
「このバンドのボーカル声がいいよね、Uの発音の仕方がいいね、とか」
「……その言い方すっごい涼ちゃんっぽい」
「優奈っぽくないなと思った、どうしたその表現力！って、疑問に思ってね、そこから」
「男に影響されるパターンの子ね……ああ、ダメだやっぱり吐きそう」
「優奈が、涼ちゃんに惚れたのかもね……」
二宮くんがタバコを消して携帯灰皿に吸い殻を入れて、膝を抱えた。
「……二宮くん」
「涼ちゃんなんかのどこがいいのよ」
二宮くんが膝の上に握りこぶしを乗せてワンコみたいにうなだれた。
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2017年3月31日 8時
