いつも君を見てる[A] (ページ10)

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9(2016/12/19) ページ10

パンを買って戻る道、もう一度ヘアサロンの前を通る。
受付には綺麗な女の人がいて、相葉さんはいない。
奥の方に居るのかも。

ちょっと覗いてみたら、奥に何人がスタッフがいて相葉さんじゃない人と目が合った。
ああ、じろじろ見てたら怪しい。
慌ててお店の前から通り過ぎる。

そっか。
職場もご近所さんになるんだ。
知らなかった。
時々、７時過ぎてえり子さんが帰った後、コンビニにパシリに使われるときとか、急いで本屋に行くときとか、そういう時たまにここの前通ってたのに。

ご縁がある人なのかもなあ。
なんて思いながらＩＤをタッチして会社の中に入っていく。
「お疲れ様です」

朝の警備員さんだ。
上がりなのかな、私服だ。
「お疲れ様です」
「お昼ですか？」
「ええ、パシリに使われてます」
「あはは、さよなら、新崎さん」
「さよなら」

……どうして私の苗字知ってるんだろう。
私、会社のみんなからA、とかAちゃんって呼ばれてるのに。
あ、もしかして、ＩＤ見たのかな？
苗字、書いてるから……？目がよすぎない？すれ違う時見られた？

二宮さんが朝あんなことを言ったせいで、ちょっと一瞬、怖くなる。
気をつけなきゃ。

帰り、二宮さんと最寄り駅まで一緒に帰って、俺飯食って帰る、って言ったから駅前で別れて、コンビニに立ち酔った。

いつもいる、バイトの子。
名前は、大野くん。
つい字を読んでしまう性格のせいで、名札を見て、こっそり、大野くんだ、って思ってることは本人には内緒。

半分眠ってるみたいな顔で、しゃっせーって聞こえるいらっしゃいませ。
レジのとこでなんかごそごそ片付けてる。

ふ、っと目が合った。
あ、最近よく来る人だ、って顔かな、知ってるぞ、って顔した。
そのまままっすぐデザートのところに行って、プリンを買おうとしたら、いつもの大好きなやつがない。

「……」
売り切れたのか。そっか。そうなのか。
しょんぼり。

仕方なくヨーグルトと明日の朝に食べるパンと、ついでに公共料金の支払いのはがきをレジに出す。

「……プリン……」

……はっ！
今大野くんプリン、って言った。
ヨーグルト見てプリンって。

「……」

……ぴ。ぴ。

「あの、これも」
はがきを出したら、わかってら、って顔で、「はい」と言った。

……ぴ。ぴ。

「よろしかったら、そこ押してください」
「あ、はい」

支払いの同意ところにタップしたら、ん、って頷いた。