いつも君を見てる[A] (ページ7)

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「え？」
「コンサートだよ」
菅田くんが鼻でふふんって笑ってやっと思い出す。

「あ、そうだ、今日だ」
「えり子、なんで嘘つくの！」
二宮さんがはあ、ってため息を吐く。

「コンサートで休むなんて申し訳ないわあ、って俺に言ったから、じゃあ風邪ひいたら？って言った」
沢村さんがこともなげに言う。

「……」
「もし電話でお客さんにえり子さんは？って聞かれたら風邪って言っといて」
「なんだ、外用か」
二宮さんがデスクに座って、だらーんってした。

沢村さんが、んんんん！って伸びをして、私を見た。
「A、俺にあつーいキス、いや違った、コーヒーお願い……寝そう」
「はーい、他のみんなは？」
黙って二宮さんと菅田くんが手を挙げた。

「私はもう出るからいいわ！戻ったらお願い！行ってきます」
天海さんがそう言って、皆が、いってらっしゃーい、って見送って、だらーんとした空気が漂う。

「……みんな起きて！」
「起きてるよ……」
「んもう」

コーヒーを淹れながら、やっぱりこの会社が好きだって実感する。
家族から一緒に新潟に帰ろう、って何回も言われた。けど。辞めたくないって両親に懇願した。
会社の業績はかなり良くて、子会社を作って株式を上場させようかってくらいらしいけど、少数精鋭でやりたいって沢村さんの意向で頑張ってるけど。
けど、多分もう限界。

Ｍ＆Ａのターゲットにされるというか、よく言えば合併、悪く言えば吸収の話が絶え間ない。
えり子さんはそういう面倒な相手との窓口になってる。
相手の人間性からある程度判断して態度を臨機応変に変えたりしてて、えり子さんを清掃会社から引き抜いた沢村さんの見る目は素晴らしい。

コーヒーを持って戻ってきたら、沢村さんはもう半分寝そうになってて、来たばかりの菅田くんもトローンとしてる。
二宮さんも、ぽち、ぽち、っていつもの200分の１くらいのスピードでキーボードをたたいてる。

「起きてー！」
「おきてます……」
「ね、A。で、一人暮らしはどうなの」
「さっき言った件で、ちょっと不安ですけど……」

「何一人暮らし！」
沢村さんの目が覚めた。

「はい」
「それは危険だな！女1人暮らしだとバレたら危険だな！」
「沢村さんが一番危なく見えるんだけど」
菅田くんが、は、って笑った。

「防犯のために男も住んでますーって空気出して男物のパンツとか干しとけば？」
二宮さんがそう言った。