いつも君を見てる[A] (ページ37)

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相葉さんが手をつないで、歩き出した。
いつもは怖い帰り道も、今日は全然怖くない。
けど、ドキドキしてる。

ドキドキ。

マンションまで帰ってきて、エレベーターの中でもずっと無言のまま。

「あのさ」
７階に着いたら相葉さんが口を開いた。

「とりあえず、電気つけずにしばらく過ごして？音楽とか音だして聞いてみたら？」
「……え？」
「おかえり、ってメールは盗聴か外から見てるのか調べてみて……」
「……ああ、なるほど」
「で、メールがもし来たら……」
「あの、メール、届かないように設定したんです」
「……そうなの？」
「……はい」

相葉さんが私をじいっと見る。
「ね、それ解除しなよ、怖いかもしれないけど、犯人探しが先だよ、逃げるのは相手がわかってからじゃないと」
「……」
「反応がないとエスカレートするかもしれないじゃん！」
「……え」

相葉さんが真剣な顔で言った。
「次はポストに何か入れられるかもしれないよ？よく考えて」
「え」
「Aちゃん、家もメアドも知られてるんだよ？」
「……」

ぐらり、と立ちくらみがした。
「家もメアドも知られてたら会社知られるのも簡単だよ」
「……」
「二宮くんに頼っちゃってさ、彼が逆恨みされる可能性もあるんだよ？俺なら平気だよ、この家のセキュリティについてちゃんと調べて入ってる」
「……あの、メール、届くように設定します」
「うん」
「真っ暗にして、家の中で音楽聞いて歌でも歌って、ちょっと独り言も言う」
「うん、ふふ」
「そのあと電気つけて、おかえり、ってメールがきたら、外から見られてる、ってことですね」
「メール来たら連絡くれる？」
「え」
「俺の部屋からベランダの方に、誰か怪しい奴いないかチェックするよ」
「いいんですか？」
「うん、頼ってって言ったじゃん」

ああ、ほんとにいい人だ。
さっき拒否しちゃって、バカなことした。

「嬉しいです、頼ってごめんなさい……」
「いいの」

相葉さんが712号室の前まで来てくれた。
ガチャリ。
ドアを開ける。

玄関の電気は24時間つけっぱなしにしてる。
相葉さんが中をちょっと覗いて、そのまま玄関の二宮さんの靴を見た。

「……誰か居る？」
「……え、いませんけど……」
「その靴……」
「ああ、これ、二宮さんが置いて行ったんです」

相葉さんが靴をじっと見た。
まただ。
また、この無表情。

「雅紀くん？」
「メール、設定しなよ」

抑揚のない声が、響く。