24(2016/12/25) ページ25
二宮さんが、言いたいことはそれだけ！って感じで帰ろうとして、櫻井さんが呼びとめた。
「今度飲みに行こ」
「いいよ」
「ニノ連絡先変わったよね？」
「あ、そっか。連絡する」
「じゃあ！Aさんもまたね。ニノに守ってもらってね」
櫻井さんがニコニコして手を振った。
「二宮さん、あんな態度……」
「翔ちゃんは信用できるから、多分710号の人も変な人じゃないと思うけど……」
「……幼馴染、っていってた」
「へえ」
二宮さんが疲れたみたいに私の部屋に戻る。
「コーヒーでも飲んで帰ってください」
「……コーヒーの気分じゃない……」
「……ビール飲まれます？」
「それ先にいえや」
「でも自転車だし……」
「自転車で２分だったからチャリひいて帰る」
あははって笑いながら部屋に入ったら、二宮さんが、はあ、ってため息を吐いた。
「あのね」
「はい」
「勘違いしないでよね、俺お前に惚れてるとかじゃないから」
「……いきなりなんですか！」
びっくりした。
ちょっとショックなのは何故だ。
「俺の知り合いが……ストーカー被害に遭った」
「……はい」
「警察にも言ってたし家族に迎えに来てもらったり友達にも助けてもらって、大丈夫に見えてた」
「……」
「けどね、ダメだった」
「え……」
「相手は元カレだったんだけどね、俺たちは周りにたぶらかされて引き裂かれたんだ、ほんとは彼女は俺のことまだ好きなのに……みたいに勘違いして暴走した」
「……」
「彼女も自分に会いたがってるのに、家族も友達も邪魔をする……警察も周りの奴が勝手に相談したんだ、彼女がそんなことするわけない」
「……」
「だって、あんなに俺を愛してたのに。俺がいないと死ぬとか言ってたのに！彼女を助けなきゃ！ってね」
うまく息が吸い込めなくて、ごくりと唾を飲み込む。
「その男はその男の正義で、彼女を……助け出そうとした」
「……はい」
「でもその彼女は刃物を手に、近づくな、って言った、けどその男はその真実を受け入れられなくて」
「……」
「数日後、絶望して彼女の前でビルから飛び降りた」
ひ、っと喉の奥が鳴った。
「ちなみに、彼女は今は幸せに暮らしてる、けどトラウマから高層ビルがたくさんある場所にはもう住めない」
「……」
「俺彼女のことちょっと好きだったんだよね」
二宮さんが私をガラス玉みたいな目で、見た。
「女より機械の方が好き」
いつもの口癖。
「恋愛すんの怖い」
二宮さんが、苦笑した。
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2016年11月28日 8時
