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……え？今の表情何？
もしかして、ほんとは迷惑だった？
呆然と立ちすくむ。
ああ、下に行かなきゃ。
モヤモヤとしながらエレベーターでエントランスまで降りる。
相葉さんの今の表情何だったんだろう。
エントランスまで降りて窓から外を見たら自転車に乗った二宮さんの姿が見えた。
「え！」
慌ててゲートを出て二宮さんに声をかける。
「自転車乗ってる！」
「自転車乗ったらなんか悪い？」
「似合う！」
「うるせー！ほらほら仕方ないから部屋行くよ！どうせ部屋の中に誰かいたらどうしようとかで怖いんでしょ！」
「多分、それは、大丈夫だと……」
「……そのディンプルキー、お前が入るときほんとに変更した？前の住人のままってことはない？絶対？」
「……」
「管理人だって信用できない世の中なんだから……行くよ！」
二宮さんのこういうとこが安心なんだ。
仕事とかでも先回りして不安の芽を潰してくれるというか。
逆に敵に回すと絶対怖い人。
スタスタ。
私の前を歩いてるエレベーターに乗り込んで、私の顔を見る。
「で？」
「へ？」
「何階の何号室よ！」
「あ！」
「お前が何号室か俺が知ってたらキモいでしょうが！」
「そっか！」
「馬鹿だねぇええ！」
口が悪い。
けど家まで来てくれるくらい優しいってことはよく知ってる。
「712です」
「702じゃなくて？へんなの」
そう言いながら二宮さんがエレベーターの壁にもたれかかった。
「すみません……」
「ほんとだよ……」
「ほんっとすみません、菅田くんは今日デートで」
「沢村さんは、あの調子だしね」
「半分以上冗談ですけどね」
「でも半分未満は本気だからね」
二宮さんがフフフって笑う。
「天海さんは忙しいし」
「あの人はジムだ多分泳いでるよ」
「坂本さんも忙しいし」
「行きつけの飲み屋で厨房入ってるよ」
「厨房」
「うん……712は、っと」
二宮さんがエレベーターを降りて歩きだして、後を追う。
710の前に通りかかったとき、かちゃ、とドアが開いた。
「……Aちゃん？」
相葉さんが私を見て、微笑んだ。
「え」
「どうも」
相葉さんが二宮さんに頭を下げたのに、二宮さんは知らんぷり。
「え、あの？」
「これ」
渡されたのは、何かのＩＤ番号。
「……え？」
「それ、ラインのＩＤ。一応、教えとくよ」
「あ、ありがとうございます」
「ん、おやすみ」
「……行くよ」
二宮さんが、私の手をぐいっと引っ張った。
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2016年11月28日 8時
