いつも君を見てる[A] (ページ17)

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相葉さんの部屋の中は、ベッドとソファとテーブルがあって、部屋の隅に段ボールがまだ積まれてる。テーブルの上には焼き鳥とビールのグラス。
なんだかいい香りがする。香水？
観葉植物もおいてあって、段ボールが片付けば、スタイリッシュでシンプルなお部屋。

「警察呼んでもどうにもならない、って言ったよね」
幼馴染さんがそう言う。
テレビのバラエティー番組からあはは、って笑い声がして、幼馴染さんがボリュームを下げた。

「Aちゃん、ソファ、座って？……コーヒーでいい？」
「あ、あの……」
「いいから。顔真っ青だよ」
しばらくしたらコーヒーのいい香りが漂ってきて、肩の力が少し抜けた。

「すみません……真梨子さん、まだ帰ってなくて」
「真梨子さん？」
幼馴染さんが相葉さんに聞いてる。

「ああ、713号室のお姉さん」
「ねえ。このマンションって変だよね、部屋番号」
幼馴染さんが、言う。

「ああ、はい。この近くに、同じ名前のマンションがあって」
「パインズレジデンス？」
「はい、ここはパインズレジデンスⅡ、ってなってるんですけど」
「確かに」
「そっちの七階は、701号から、になってるらしいです」
「うんうん」
「で、こっちは710からで」
「このね、710って数字も変でしょ」
「……え？」
「普通、711からにならない？」
「ああ、715、が角部屋になるようになってて」
「うん」
「このマンション4号室がないんです」
「……４階はあるのに？４がダメなの？不吉？４はし、で死を意味する？幸せだって、しから始まるの言葉なのに！」
「……」
「まあいいや」

ああ、急にどうでもいい顔になった。

「おまたせ」
相葉さんが、なんというか、ころんとした可愛いマグカップにコーヒーを淹れてくれた。

「かわいい」
「でしょ」
にこっと笑って床にぺたん、と座ってる。
長い脚を折り曲げて、長い指でグラスを持ち上げて、乾杯、って感じに私をみて微笑んだ。

笑うと黒目がちな目が柔らかく曲線を描いて、いつも笑ってるんだなあ、って感じに目じりに皺を作る。
安心する。

「まだ知り合って間もない男に助けを求めるほど何か困ることがあった」
幼馴染さんがそう言った。

「……」
「あ、僕櫻井って言います、これ」
名刺を渡された。

「……同業者さん……私名刺はもってきてなくて」
「いいよ、712号室の新崎Aさん」

……この人。

「翔ちゃん、Aちゃんおびえてるからやめて」
相葉さんが苦笑いした。