いつも君を見てる[A] (ページ12)

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大野くんが、もっともなことを言った。
「そうだね……」
「俺の名前知られてたから今ちょっと見た、いつもはこんなの気にしたことないけど。ちょっと危ないよね」
「……」
「……162円です」
「はい」

大野くんが袋に入れようとしたから、袋いいです、って答える。
とりあえず、お礼言わなきゃ。
多分、私のために置いておいてくれたのよね？

「桐山くんありがとう」
「いえいえプリンさん」
「プリンさんってやめて……」

なんか脱力。
芸名とか源氏名みたいじゃない。

「じゃあ、Aさん」
「はい……」
「明日もお取り置きします？」
「じゃあ、お願いしてもいいですか……」
「了解っす！」

「ありがとうございましたー、プリンさん」
大野くんが私をみて、くしゃって感じで表情を崩して笑った。

「プリンさんやめて……」
「じゃあ、Aさん」
「はいどうも……苗字じゃなくて下の名前なのがひっかかるけどまあいいや」
「俺は智」
「……ああ、そうですか……お疲れ様です」
「うん。じゃあ、また明日……えっと、新崎さん」
「あ！また見たな！」

思わず抗議。
「あした、もし俺も桐山もいなかったら、プリンさん、『プリンお取り置きしてもらってますAですけど！』って言わなきゃなんだぞ」
「……」
「お取り置き下の名前でする人なんていないぞ」
「ごもっともです……新崎です、よろしくお願いします」
「はーい、あざしたー」

コンビニから出て、ちょっと脱力した。
なんだったんだ、今の。

ちょっと疲れた。

けど、そうよね。
公共料金のはがきには、いろんな個人情報が載ってるんだ。
気をつけなきゃ。

さっきのバイトの子たちも、いい子っぽかったけど、絶対大丈夫だとはいえない。
警戒しすぎかもしれないけど。

プリンとヨーグルトの入った袋を眺める。
今まで毎日会ってたのに、ちゃんと話したの初めてだった。
顔見知りなのに、話したこともないって、ちょっと冷静に考えたら変なことだ。

朝の警備員の人もそうだし、駅員さんだってそうだ。
定期に名前、入ってる。
それに、ヘアサロンだって、カルテかいてるんだもの。

ヘアサロン、って思い出して、相葉さんのことを思い出した。

この世は、広いようで、狭い。
それが、こわかったり、安心だったりするんだけど。

そういえば私、最近全然サロン行ってないなあ。
……相葉さんのとこ行ってみようかな。
なんてね。