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「じゃあどういう感じなんだよ」
関矢くんがイライラしたみたいに言った。
「先生が、先生らしくない、それだけは確かで……」
「……」
「何考えてるのか全然わかんないし」
「うん」
「多分、愛されてると思う、なのにダメな感じ、ってわかる？」
「それってAがもう先生のこと好きじゃなくなってるんじゃないの？」
「……」
「洗脳されてるだけでさ、本当は好きじゃないんじゃないの？だから深層心理が、この人じゃないって叫んでるんじゃないの？」
「……洗脳？なんてそんな簡単にできないし、そんなわけないでしょう」
「先生のこと怖いんだろ？先生の命令の背くこと、震えるほど怖いんでしょ？だから一緒にいるんだ、好きじゃないんだよきっと」
関矢くんが私を目を見て言う。
「Aが先生のこと気になりだす前のほんとに好きなやつって、どんな奴だった？」
「……私ね、関矢くんのこと好きだったよ」
「……」
「今は、もう、先生のことが」
「くっそ、なんでこんなことに？」
関矢くんが駐車場でしゃがみこんだ。
「それは」
「先生のせいだ」
「……」
「先生が全部、自分の思い通りに人の心を動かすんだ、怖い人だあの人は」
青い空。
白い雲。
初夏の海と風。
美しく明るい大自然の中で、私たちはなんて似つかわしくない話をしてるんだろう。
「そんなわけ……」
「ないって言い切れる？」
「……」
「俺たちみんなあの人の思った通りに動かされてる」
「……」
「もしAが少しずつ別れたいと思うようになったとすれば、それは先生の意志かもしれないだろう、それが自分の意志だとどうして言い切れる？」
「……でも」
「目を覚ませって、俺たちみんなあの人の意のままに操られてるんだよきっと」
関矢くんが私の頬を両手で挟んだ。
私の目をじいっと見つめる。
「A、先生に出会う前に戻ってよ」
先生に出会う前の私って、どんなだった？
思い出せないよ。
毎日楽しかったけど、でも。
……寂しくて。
寂しいのは、いくらかマシになったけど。
でも、今も。ずっと。
「関矢さんとAさーん」
高杉くんの声がして、関矢くんがぱっと体を離した。
「トイレの帰りです、手伝いますよ」
ホッとした。
一瞬、ぐんにゃりと心がゆがんだような気がした。
車の中に置き忘れてた、紙コップやお菓子やクーラーボックスをもって、海に戻る。
先生がこっちを見た。
鋭い目で思わず目をそらしたら、同じ目で飯島さんも私を見た。
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2016年8月4日 6時
