51(2016/08/11) ページ11
そのあとは、なぜか私は石塚くんに捕まって、先生と３人で三種の神器についての話に付き合わされた。
男の人って武器好きだなあ。
草薙剣とはいったい何の意味を持つのか。
クシナダヒメの櫛とはいったいどんな意味があったのか。
八咫鏡と八尺瓊勾玉とは？
先生の口調も熱くなってその話を聞いて高杉くんも興味津々で。
野村くんがせっせと肉を焼いてはみんなに振る舞ってる。世話好き。
関矢くんは到着して一杯だけ飲んだから、仮眠をとってる。
せっかく海に来たのに、男性陣は飲んでばっかり。
夕方になって、夕日が海を赤く染めた。
海、入っちゃおうかな。
みんながだらだらとしてる隙を狙って波打ち際まで行ってみた。
ざざあ。
寄せては返す波を見て、ありきたりだけど、自分ってちっぽけだなあって。
海と夕日には、絶対そう思わせる力がある。
だから古代の人は、海神を畏れつつ敬い、太陽神に祈りをささげるために歌が生まれた。
言霊。
明日も生きていますように。
そういう単純な祈りから、言葉が生まれて、その祈りは強い力を持った。
あふれかえる嘘の情報の中で生きる時代を、古代の人が見たらどう思うだろう。
暑くて死にそう、なんて軽々しく言ってはいけない。
それは、真実になってしまうんだよ。と。
生きたい、そして、愛する人も、無事で。
切実に、祈るために声を出すのだ。
遠い昔から、今も変わらず。
愛する人。
その言葉を心で選んだとき、思い浮かべた人は、家族でも友人でも誰でもなく、たった一人。
「A」
先生が私を呼び掛けた。
「……はい」
「海でキャハハってなってるとこまだ見てない」
「ええーい、って水、かけてみますか？」
「きゃはは、うふふ、待てー、って追いかけっこして抱き合うみたいなベタなやつ？」
「みんなドン引きですよ」
「はは」
振り返ったら、先生が夕日に赤く染まって、とってもきれい。
「先生綺麗ですね」
「綺麗ってなんだよ」
「夕日がとっても映えるってことです」
「それをいうならお前も金色に光って見えてる、そのまま海に消えそうだな、って思って」
「……」
「だから思わず、迎えに来た、というか……」
ざざあ。
波の音に、心がどんどん静かに、穏やかになっていく。
「両想いになったらハッピーエンドだと思ってました」
「……うん」
「付き合ってからの方が苦しいなんて……全然、知らなかった」
「……楽になりたい？」
先生の目が、泣いてるみたいにキラキラ光った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 5125人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2016年8月4日 6時
