41(2016/08/04) ページ1
日が変わる、少し前。
もう寝ちゃったかな？と思ってた先生が、のそり、と動いて私を抱き寄せた。
「あれ？起きてたんですか？」
「お前こそまだ起きてたの」
先生に無理矢理襲われた。
見えないとこにしてください、ってお願いしたのに首の目立つところに痕を残された。
先生怖かった。
でも、もう怖いとは言えない。
悲しい顔させちゃう。
先生の腕の筋肉を指でぷにぷにとかやってたら先生が私をぎゅっと抱きしめた。
ほう、と力が抜けて目を閉じたら先生が篭った低い声で、そういやさ、って私の耳に問いかける。
「はい？」
「俺ら確か今日の昼まで何かに対して腹を立ててた気がするんだけど、何だったっけ？」
「あー……」
「ん？」
「朝ごはん食べながら不幸にしてやるとか言われて言い合いになりました……」
「ああ、それか……」
先生がふふふ、と笑った。
「それだけじゃなくて、今日も俺の部屋に来いって怒鳴った気がするんだけどな」
「ああ！あんな男の食べたいものなんて興味ないって言ったの聞かれて缶コーヒーで殴られました」
「食い物の恨みは恐ろしいな……」
「食い物の恨みなんですね……」
「そういうこと」
いや、ちがうでしょ！
と言いたいけどもういいや。
低い声が心地いい。
弾力のあるモチモチの腕の筋肉も気持ちいい。
それとさっき泣きすぎて疲れちゃってる。
眠い。
先生が、私を見下ろした。
「ん？」
「おやすみ」
後頭部を強めに抱え込んで胸の中に閉じ込められる。
見上げたら先生が、とてもとても切ない目で一点を見つめた。
ん？せんせい？
「ほら、目閉じるだけでも疲れ取れるんだから、な？」
先生の親指が私の瞼を撫でた。
心地いい。
まだ胸はシクシク痛いけど、今はそばにいてくれる、それだけで少しだけ安心だ。
私が目を閉じたら先生が、ん、って言った。
あんしんする。
最後にもう一度だけ目を開けたら、先生が無表情で一点を見つめてる。
手は私の髪をするすると梳いてる。
視線の先を想像して、ハッとした。
……ああ、先生、時計見てるんだ。
日が変わる瞬間を、私が見ないように隠してくれてるの？
『口で言うのは簡単だろ、行動で示せ！』
先生、学校でいつも言ってるもんね。
先生の愛情が伝わってきて、胸がどうしようもなく熱くなって涙がつっ、とこぼれ落ちた。
「……泣くなって……」
先生が吐息だけで囁いた。
「幸せの涙です……」
先生が私をぎゅうううと抱きしめた。
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2016年8月4日 6時
