5 ページ6
「あのさ、うちのかーちゃんね」
二宮先輩が手のひらをぐーぱーしながら、ポツポツと話しだした。
「はい」
「敬語いいよ」
「うん」
「ん」
はぁー、と溜息を吐く。
「あの人ね、元気そうに見えるけど、実はちょっと体壊しててー」
「え？大丈夫なの？」
「まぁ、無理しちゃうとダメだよね、今まで騙し騙しやってたんだけど、半年くらい前とうとう倒れちゃってさ」
「うん」
「そこでね、お前のとーちゃんが、親身になって助けてくれたりした」
そういえば半年くらい前、たしかに忙しそうにしていた。
去年の秋くらい？
「俺高校出てすぐ働こうかなと思ってたんだよね、かーちゃんあんなだしさ、大学なんて行ってる場合じゃないでしょ」
「……」
「奨学金とか借りて大学行こうとも思ったよ、でも……俺に所得が出来たら色々とね、お国からの援助が打ち切られたりするから」
「……うん」
「俺かーちゃん扶養に入れて……奨学金の借金返して……生活費……。まぁ、それもがんばれるよ、きっとね」
二宮先輩がふー、と溜息を吐く。
「でももし、俺になんかあったら」
「……」
「それが一番怖いよ」
ふふ、って二宮先輩が笑った。
「大卒と高卒じゃ生涯年収、二割くらい違うんだよね？家一軒分くらい違うかな？」
「うん」
「たった4年、大学に行くってだけで、お仕事の内容も変わっちゃう。おっきい会社に入りたかったら、大学は行っときたい」
「そうですね……」
「だけど、全額負担してもらえる方の奨学金対象になるほど頭良くもなれない」
二宮先輩があはは、って笑う。
「あー！もおっ！いいよな！気楽な奴らは！」
二宮先輩が空を見上げて、笑いながら吠えた。
「先輩……」
「お家のことしながら受験勉強もしんどいし」
「……」
「かーちゃん具合悪いのに、大丈夫、大学に行かせてやれるだけの貯金はあるって。ねーよ！知ってるよ！」
「先輩……」
目が、きらきらしてる。
さっきまでの二宮先輩は何か企んでる風だったけど、今は、違う。
これは本音だ。
「そんなとき……お前のとーちゃんと、バッタリ病院で会ったとき……」
「……うん」
「大学行っとけ、って。うちの会社、どんなぼんくらでも大卒資格持つ奴しかとってないって、言った」
「……」
「無理だよって、言った。そしたら、Aと和くん二人大学に行かせるだけの余裕はあるって。かっこいいな、お前のとーちゃん」
二宮先輩が、フフ、って泣きそうな目で、私を見下ろした。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 4374人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
なるちゃん(プロフ) - うわーん！ 涙涙、、、 カズくんがお兄ちゃんでよかった！！ (2018年1月29日 10時) (
レス) id: a1fe1fb9b8 (このIDを非表示/違反報告)
こずえ(プロフ) - こんばんは。いつも読ませて頂いてます。年の近い兄ってこんな感じなのかなって想像しながら読んでます笑 冷たくしてしまうお兄ちゃん…素直じゃないですね〜 これからどうなるのか楽しみです！ (2016年5月13日 23時) (レス) id: bf5dbd1af4 (このIDを非表示/違反報告)
るこ(プロフ) - こんにちは♪お兄ちゃんたらっ///本当に素直じゃないんだからと、悶ております♪今度はいつ、甘やかしてくれるのかしらん♪ (2016年5月13日 14時) (レス) id: c20acea42a (このIDを非表示/違反報告)
梨沙(プロフ) - お兄ちゃんのバカ！でも好きで好きで死にそうです。今日はどんなウィンクで殺しに来るのかと♪(´ε｀ ) (2016年5月13日 13時) (レス) id: e385bf4ae4 (このIDを非表示/違反報告)
ebi信号(プロフ) - 我のアホな行動、言動にズドーンと堕ちてた、けど、やっぱり読みたくなってしまう…(T＿T)ｼｭｰﾝ (2016年5月13日 13時) (レス) id: 76d9f58a12 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2016年4月22日 14時
