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ある日。
私の改装のプランが通って、課長と一緒にファッションビルに行くつもりで準備していたら、
課長が『おい櫻井』と声をかけた。
「はい」
私と課長を交互に見る、櫻井くん。
なんだろう？って顔。
顔に全部書いてあるんですけど。
わかりやすいというか。
「お前もついてこい」
「……えっ！」
「え！」
私も声が出た。
ここは同じチームでやってた斎藤さんじゃなくて？
斎藤くんが、え！俺じゃないの！って顔でこっちをチラチラ見てる。
「僕が……ですか？」
「うん。今後のこともあるから」
斎藤くんが、俺は？ねえ俺は？って顔でこっち見てるけど、無理やり目をそらす。
「べ、……勉強させていただきます」
櫻井くんが目をキラキラさせた。
「チーフ、邪魔にならないようにしますからよろしくお願いします！」
邪魔なんて！邪魔なんてありえないよ。
同じチームが斎藤くんだぞ？
斎藤くんは斎藤くんでいい子だし面白いし、盛り上げ役とかにはいいんだけど。
櫻井くんに敵う子なんてこの世のどこを探してもいるわけ無い！
「よろしくね」
なんてね、むふふ。
櫻井くんといっしょ。
うれしい。
私が大きなファイルとタイルとか壁紙とかのサンプルが入ってる荷物を持ち上げたら、櫻井くんが僕が持ちます、と言ってくれた。
「ありがと……」
重い方のタイルのサンプルを渡す。
「そっちも」
「壁紙も？」
「女性にこんな重い荷物持たせられません」
とか斎藤くんに千回くらい聞かせたい素敵なセリフ。
櫻井くんが荷物を持ち上げた。
「おっも！」
櫻井くんが唸った。
おおお！首の筋が！血管が！
手も！腕まくりクソ萌える！
もしかして櫻井くんって隠れマッチョなのかしら。細く見えるけど。
脱いだら胸の筋肉とか腹筋とか、ちゃんとしっかりあったりして力強……
……て、オイ。
櫻井くんが脱いだとこ想像してる私どうかしてる。ここ職場だぞ？
斎藤くんまだこっち見てるのによ？
「いくぞ」
課長に言われてハッとした。
「はい」
「……ん？チーフ？大丈夫ですか？」
櫻井くんが私の顔を覗きこんだ。
丸い目がくりくり。
「何が？」
「ぼーっとしてる……」
「そうかな」
「具合悪かったら言ってくださいね」
「櫻井くんに何ができるのよ？」
ああ！私可愛くない！
「おんぶ？」
ぶ、の言い方！口！尖ってる！
おんぶしてほしい、とか思った自分にうんざりして、大きなため息が出た。
すみません、櫻井くんが謝った。
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2016年3月29日 21時
