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「私はね、言っとくけどね！相当、ご無沙汰なのよ！」
「何が！」
「恋愛に対するあれこれよ！」
「あれこれって何！」
「人を好きになったり、別れたり、やっただの、やられただの」
「下品」
「うるさい！」
にらみ合う。なんでこんなことに。
「だから、どうしたらいいのか全然わかんないんだけど……」
「……課長のことは好きだったんでしょ」
「好き、ってなんだ……？」
「は？」
「好きって何！」
「いきなり何？」
「恋愛感情がよくわかんない！彼氏にしたいタイミングがわかんない！」
「……その人に笑っていてほしい、出来ればこれからもずっと一番自分の近くで、とかそう思ったとき、じゃないの？」
「……」
それはもうずっと前から櫻井くんのことだわ。
「なるほど……」
「うん」
「課長のことは好きよ、でも笑おうが怒ろうがどうでもいいかもしれない……悲しんでたらつらいけど……」
「は？恋愛感情じゃなかったの？はあ？」
「結婚してるのよ？人の旦那さん好きになるの、不毛でしょうが」
「そう割り切れるなら好きじゃないんですよ、きっとね、なるほどね」
櫻井くんが、いっぱいうなづいた。
「でも、櫻井くんのその定義で行くと私にはもうずいぶん前から彼女になりたい人がいることになる」
「ずいぶん前？」
「初めて会った時からできたら一番近くで笑ってるとこ見てたいと思ったというか」
「……は？好きなやついんの？本格的にバカ？気づいてなかったの？」
「……」
「じゃあ、仮に……そいつが、結婚したとしたら？」
櫻井くんが意地悪っぽく聞いてきた。
櫻井くんが結婚。
ぶわあ、ってなんだか涙が込み上げてきた。
「えっ」
「……それでもやっぱり、笑ってる顔がみたいよ、誰のものでもいいから、傍にいてほし……」
「じゃあ、なんで泣くの」
「わかんな……」
櫻井くんが私の体を一瞬抱き寄せた。
そのまま体を入れ替えて、壁にドン！と左腕をついた。
風圧で髪がふわああってなるくらいの勢い！
危ない！ってか近い！
前髪が当たってる！これ、脅すときの方の壁ドンでしょ！
ひ、って喉が鳴る。
「そいつ誰だよ？」
櫻井くんの右足が壁をドカンと蹴った。
ひいいい。怖い。怖いですううう。
「言いたくない」
「言えって。場合によってはそいつぶん殴ってくるから」
「どうして！」
櫻井くんが、私をじいっと見下ろした。
はああ、って大きなため息を吐いて、壁に両腕をついた。
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2016年3月29日 21時
