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「ちょっと！」
「チーフと違って忙しいので戻ります」
「可愛くないぞ！」
「嬉しいなあ、かわいいって言われるの嫌いなんで」
「可愛いのに可愛くない！可愛いのに！」
「何？その口ふさいでほしいわけ？」
……！
昨日の櫻井くんが頭の中にフラッシュバック！
顔がかあっ！っと赤くなったのが自分でも分かって慌てて顔を覆う。
「ふふ、何考えてんの？仕事中なんですけど」
書類の束で頭を殴られた！
「可愛くない……」
「それ褒め言葉ですね」
感じ悪い。
そのまま、またいなくなった。
なんなの。
なんでこんな態度とられなきゃなの。
くっそ！くっそう！
こんなイライラしていても、寝不足でも、お腹減ってても、仕事はちゃんとできる私って偉い。
目の前にイライラの原因がいても気にせず、仕事に……集中……なんてできないけど。
気づいたら、終業時間になって、管理職の皆さんと一部の人たちを覗いて、ノー残業デーで帰っていく。
私も帰ろうとしたら、ちょっとややこしい問い合わせがあって、その対応に追われていたら、気づいたら社内には大野くんと新課長しかいなくなってた。
もう帰ろう。
帰って寝よ。
頭をガシガシ掻きながら、あーもう！って感じになってる二人にコーヒーでも淹れてあげよう。
それから帰ろ。
コーヒーを淹れに給湯室に入ったら、中に、櫻井くんがいてコーヒーを淹れてる。
「うおっと！」
「……」
「お疲れ様です、くらいいいなさいよ」
「お疲れ様です」
「何怒ってんの」
「怒ってるって気づいたんですか？賢い！」
脇腹あたりを思いっきり殴ってやった。
「いった！」
「だから何を怒ってるの」
「わかんないとしたら相当なバカですね、尊敬に値します」
「……」
「あーあ、ほんとなんでこんな女……」
コーヒーが、みっつ。
ひとつは私のマグカップ。
「……」
「……」
いい香りが漂ってる。
「話がしたいんだけど」
「どうぞ」
「こんなとこでは話せない」
「ここで話せないような内容なら僕は聞きたくありません」
「あのね……」
「あのさあ！」
櫻井くんがいきなり大きな声を出した。
「……え」
「あんたバカ？気を抜いたらがくーって落ち込みそうなのわかんないの？頑張ってんだから邪魔すんなって」
ぐぬぬぬ。
壁にもたれて見下してる櫻井くんを見てたら、見てたら！
ええい！
壁ドン！
櫻井くんが目を丸くした。
「チビに壁ドンされた、屈辱！」
「はあ？」
ああ、もう、イライラする！
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2016年3月29日 21時
