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シホちゃんが小声で、「どうでした？」と聞いてくる。
「ああ、うん。魔法にでもかかったみたいな……」
「うまくいきました？」
「本部長に入ってもらって、逆に仕事もらえそうな勢いだった」
「よかったー」
「もしかして、本部長呼んでくれたの？」
「ああ、櫻井くんが！慌てて受付に電話して、どんな感じの風貌か聞いて、それ湯浅取締役だから同窓の井口本部長にお願いしてきますってダッシュ」
「……」
「ほんとできるよね、あの子」
「うん」
「とくにAさんが絡むとパワーアップするというか」
「……え！」
シホちゃんが、私の顔を覗き込んだ。
「ほんっと櫻井くんって、Aさんのこと好きよね、よく見てるというか」
「……」
「気づいてなかったんですか？」
顔がかあっと赤くなる。
うそだ。そんなの知らない。
「……」
櫻井くんがドカッと席に戻ってきた。
「あの、櫻井くん」
「なんですか？……あ、失礼」
そういって電話を取った。別にほかの人にとらせりゃいいのに！
電話が終わって、声をかけようとしたら、ちょっと営業部に行ってきます、とか言っていなくなった。
そのまま昼の休憩に言ったようだ。なんだよ。
戻ってきたのを見計らって声をかけようとしたら、ちょうど本部長がやってきた。
「すまなかったね」
私をみて、開口一番謝った。
「いえ！どうでしたか」
「おかげさまでね、まあ怒りは収めてくれたけどね。俺の昼飯代が二倍になっただけ」
「よかった」
「仕事ももらえたからまあ結果オーライだね、あ、櫻井くん」
「……はいっ！」
櫻井くんが呼ばれて慌てて飛んできた。
「よく知ってたな、俺と湯浅くんが旧友だと」
「一度、ＹＳコーポレーションにご挨拶に伺ったとき、本部長とは同窓でね、ってことをおっしゃってたのを思い出して」
「ほう、やるね君」
「たまたまです」
「ふーん」
本部長が櫻井くんをじろじろ見た。
「期待してるよ、お疲れ。さ。食後の腹ごなしに、営業部になぜ企画に電話を回したんだって怒鳴りつけてくるとするか」
あああ、お気の毒。本部長怖いのに。
櫻井くんがニコニコ本部長を見送って、私をちらりと見下ろした。
「チーフが頼りないと後輩が育ついい例です、ありがとうございます」
「……可愛くない言い方！」
「ほめ言葉、ありがとうございます」
「ちょっと！可愛くない！」
「光栄です」
ぎぎぎぎ。
お礼言おうと思ってたのに！
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2016年3月29日 21時
