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ぎゅーは大変心地いいんだけど。
でも。
力加減ちょっとおかしいよ、櫻井くん。
「くるし」
「ああ、ごめん」
櫻井くんが慌てて手を緩めた。
腕の中で、俯く私を覗き込むみたいに様子を見てる櫻井くん。
ブルーのネクタイにちょっと触ってみた。
「……ん？」
「ネクタイって、苦しくないの？」
「慣れるまではね」
そういって間近でネクタイをほどくところ観察。ありがとうございます。
するりとほどいて、片手でシャツのボタンに手をかける。
ボタン外してる表情も見たい。ちょっと見上げる。目が合う。
「ん？」
ちょっと眉を下げて口をアヒルみたいにした！
うっわあああ、好きだ。
これまずい、好きがあふれた！
「あ、ごめん、おそば」
慌てて立ち上がろうとして、まって！って引き戻されてまた腕の中！
「へ」
「もうちょっと、このまま」
うううう。
櫻井くんってさ、もしかして私のこと好きなのかな。
まさかね。
櫻井くんが誰を好きでもいいのよ。
ちょっと独占欲とはかけ離れたところに彼はいる。
国宝にしたい。
それくらい愛おしい。
櫻井くんの唇がまた近づいてきて、キスされるかどうかは置いといてもう先に目を閉じて、自分からおねだりしちゃった。
さっきは動揺してたからわかんなかったけど。
唇、やーらかい。
ビールでひんやりしてる。
いいかな？って感じで唇を開いて、ぱくって、食べられた！
ぐるんって舌が絡んできた！ひいい！
ちょ、ちょっと！
その気になっちゃうよ！私が！
ってか背骨溶ける！
櫻井くんのシャツを握りしめたまま、ずるずると崩れ落ちる。
櫻井くんの鍛えてる腕で支えられつつ、不安定な体は簡単に床に、堕ちた。
櫻井くんに押し倒されたみたいになってるけど、シャツと腕を掴んだまま離さなかった私が誘導したともいえる。
少々？お酒が入ってて、二人きりで、ちょっと好意を持ってるようなフリをしてる健康な男女がこの体勢になったら。
もう止まんないのが普通でしょ。
櫻井くんが私を見下ろした。
「Aさんってひどい女だな」
「……」
「拒めよ……」
私をその気にさせたのは櫻井くんのせいなのに私のせいにした。
いいよ、
お酒のせいとか、課長の異動の寂しさとか、なんか色んなもののせいにしよう。
きっかけなんて何でもいいし、
今後のことは今後考えればいいだけで、
とりあえず今は。
「もっと、ぎゅってして」
櫻井くんが私をぎゅううって抱きしめた。
窒息しそうなくらいに。
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2016年3月29日 21時
