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しばらくの間、ゆっくり背中を撫でていた手が止まる。
と、きたら、次はきっと。
ほらね、距離を詰めてきた！
ぴったり隣に座った！
左腕を私の背中において、手のひらで、頭をなでなで。
ううう。体温が。
櫻井くんの香りが！
腕の重さまでさいっこうに心地いい。
どきどきの沈黙。
テレビつけててよかったよ、お腹ぐるぐるとか鳴ったら最悪だわ。
でもここで私が逃げなきゃ、たぶん抱きしめられる流れよね。
いい加減テーブルにつっぷし続けるのにも違和感が。
どうすべきか。逃げる？
いや、もったいない！
……もったいない？何考えてんだ私。
でも、だって！抱きしめられたい！櫻井くんに！
ずっと興味あった胸筋がどの程度がわかるんだよ？
とか何を。私ったら。
「Aさーん？」
「……」
「寝ちゃった？眠いの？」
「んー……なんか頭撫でられてたら、きもちくて……」
嘘でしょ。何この甘えんぼの声！
私の口からこんな甘えた声が！ひいい。
「でもこんなとこでこんな寝方したら……風邪ひいちゃうよ？」
櫻井くんの声もあまあああい！
くううう。
すーきーだーーー！ってゴロンゴロンしたい。
でも無理やり抱きしめる流れにはさすがに持ってこなかったか。
だよね、彼氏なら無理矢理抱き起してぎゅーとかやるかもしれないけど、私は上司。
「だね、起きる、おそば……」
体を起こしたら、櫻井くんが私の顔を覗き込んだ。
ドアップだ。
「ん？」
「目がとろん、ってなってる」
「ん」
「おでこ、赤くなってる」
櫻井くんがおでこに触れた。
「ん」
「でも泣いてなくてちょっと安心した」
「うん。それどころじゃない」
「どうして」
「櫻井くんがいるから。帰ったら、ゆっくり泣こうかな」
「じゃあ、帰りません」
「……泊まるの？」
「Aさんさえ良ければ」
……きっかけ探してる櫻井くんがだんだんもどかしくなってきた。
なんて思う私は間違いなく、酔っぱらってる。しかも半分寝ぼけてる。
これからのこととか、上司と部下の立場のこととか、もうどうだっていい気持ちになってきた。
明日以降のことは明日考えればいいか。
うん。
アシストしちゃえ。
「甘えていいの？」
「いいよ？」
「じゃあ、ぎゅってして」
櫻井くんが、はは、って声を出さずに吐息で笑った。
「やっべ、Aさん、可愛い」
櫻井くんが、がばあ！って感じでぎゅってした！
やっぱりね。
筋肉がいい感じ！とか何考えてんだ私。
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2016年3月29日 21時
