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ビールを一口飲んでるのを見届けて、自分の分も手酌でグラスに注いだら、あ！って顔をした。
先輩に手酌させてる！しかも先輩より先に飲んじゃった！乾杯忘れてる！
って顔だなこれは。
後輩が全く抜けきれないんだから偉そうにするの辞めればいいのに。
やっべえ。死ぬほどかわいい。
「Aさん、あのさ！」
「ん？」
お？酒に勢いを借りた系か？頑張れ櫻井くん！
なんて他人事。
「Aさん、前に、課長が好きだって言ってましたよね」
「……いつ？」
「大野さんに、言ってたのを聞きました」
「……」
「年下に興味ない、みたいなこと言ってた」
「……うーん」
「俺のこと、女の子より可愛いとかありえないとかも、言ってました」
あ！あのときか！
「……日高昆布！」
「え」
「櫻井くんが日高昆布のおにぎりを！」
「あ、そう、その時ですたぶん」
「あー、あの時はありがとう、あんなにうれしいもんなんだね、私も課長に同じことしたことあったけど課長はなんで私に惚れなかったんだろう、謎だわ」
「Aさんだって俺に惚れないじゃないですか」
惚れてますけど？
いやいや待って。
それを言って困らせない？
困るよね。
うん、困る困る。
上司に好きだとか言われたら付き合わなきゃ、とか思うだろうし。
「そんなことで惚れるほど、お安くありません、ってことね」
とか言ってみた。
私は110円でメロメロになりました。なんてことは言わない。
「……課長のこと、お好きだったんですね」
「まあね……ロンドンかあ……遠いなあ……」
「……」
「私の大事な人ばっかりロンドンにいっちゃう」
「……え」
「松本くんもそうだし……課長も……櫻井くんだって可能性高そうね」
「……」
「私もロンドン行きたいよ……」
テーブルに突っ伏したら、櫻井くんが頭をなでなでしてくれた。
「きもちいい」
「……」
「小さな女の子になったみたい」
「小さな女の子ですよ、Aさんは」
「ちっさいおっさんですよ」
「おっさんじゃないよ……」
「ありがとう、そういってくれるのは櫻井くんだけだよ……」
櫻井くんの手が、するりと背中を撫でた。
おおおっと。これ。こういう感じ久々だわ。
相手との距離感測るやつだよ。
これで嫌がらなかったら、こういって、って段々篭絡されていくやつ！
駆け引きみたいなの久々過ぎて忘れてるけど超ドキドキでなんかすっごい楽しいんですけど。
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2016年3月29日 21時
