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なんか激しく勘違いされてる。
きっと、櫻井くんの中で、私は
『結婚しててもずっと好きで、片想いしていた課長がロンドンに行っちゃう、寂しい』
ってストーリーになってるんだきっとー！
そりゃ寂しいし悲しいけど！
違うよ！違う！
けど今更、『違う違う！アハハハ！んなわけないでしょう！』
って言える雰囲気じゃないー！
「あは、気にしないで、櫻井くんも酔ってるんでしょ？早く帰んなさい」
「帰りません」
「……」
「帰しません」
「……えっと」
「俺んち、連れて帰っていいですか？」
「……え……！」
なんだそれー！私何純情ぶってんだー！
「じゃあAさんち、お邪魔していいですか？」
「……」
「嫌だったら、すぐ……帰るから……」
「……え？」
「うん。……帰ったら、一人で泣くんでしょ？」
「……」
「一人で、課長のこと想って泣くんでしょ？」
そりゃ、ちょっとは泣くかもしれない。
さっきまでの私なら確実に泣いてた。
けどね！今は！
櫻井くんとキスしちゃったあ！
いやっほう！
って、そっちの方が断然強いよ！
早く一人になって、ベッドにダイブして、櫻井くううううーん！さいっこうにかわいいいい！
って叫びつつゴロンゴロンしたい。
「櫻井くん……あの」
「俺の胸くらいなら貸してあげられるから。年下で頼んないかもしれないけど……課長の代わりにはならないと思うけど……」
「……」
「一人で泣くよりは、マシでしょ？」
あらら？
涙が込み上げてきた。
櫻井くんが優しくて。
なんていい子なんだ。
私なんかに。
「Aさん……ちょっとは俺に頼ってよ」
「……ん」
私、チーフとかいう肩書もらって、突っ張って、踏ん張って頑張って来て。
同期の女の子に偉そうに、って陰口いわれてることとか、生意気な小娘って上司にうざがられてることとか。
言いたい奴に言わせとけ！アハハ！って笑えたのは課長が守ってくれてたからだしな。
あれれ？
今までの何だか辛いこととか悔しかったこととか勝手に思い出して泣けてきた。
「Aさん」
櫻井くんが私の手をぎゅっと握った。
櫻井くんも酔ってるのかな？
あー、可哀想な先輩に、体を張って励ましてくれてるんだろうな。
甘えちゃおうか。
「……慰めてくれるの？」
「違う、俺が慰めたいんだってば」
はい、堕ちた。
もう既に堕ちてるけど、完全に堕ちた！
櫻井くんが、寂しそうに微笑む。
とりあえず酔ってることにして、櫻井くんの手をぎゅ、と握り返した。
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2016年3月29日 21時
