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「ね、これ何の魚？」
上手く捌かれてくるんってひっくり返されて、綺麗な形で立体的になってる魚を指さして、清水に聞く。
「さぁ？」
「どれかなぁ？」
メニューを見ようとしたら、背後から、声がした。
「グルクン」
この声は！
とっさに振り返ったら、大野さんが、立っていた。
「ぐるくん……」
「その魚、グルクンでしょ？」
大野さんが魚をじーっと見下ろした。
横顔。
ううう、やばい、死ぬほどかっこいい！
近くで見たら結構彫りが深いというか！
「ここどうぞ？」
清水グッジョブ！！
席を一個ずらして私の隣をあけた！
目の前にグルクンの唐揚げのある席を！
すとん、と座る大野さん。
「食っていいの？」
私とももちゃんの席の周りには殆ど食べ物が残っていて、ももちゃんはのんだくれだし、私は披露宴で食べ過ぎてセーブしてて。
その他の女の子も途中で帰ったり、フルーツばっか食べてたりで全然料理に手を付けてない。
ふるふる震えながら、ああ、グルクン、グルクンって言うんだ、グルクングルクン。
とか呟いてたら、ぷ、っと笑い声がした。
「グルグル言ってる」
っ！
私に！話しかけてる！
「グルクンってなんか、かわいい名前、グル君みたいな」
「……へ？」
ですよね、意味不明。
しばらく考えて、ふ、って笑った。
ひぃぃやぁぁぁあ！
この笑顔！この笑顔です！好きなの！
「タカサゴとも、言うよ」
「高砂？地名？」
「なんで魚の話してんのに地名の話になんの？え？」
眉間にふ、っとシワを寄せて口を尖らせた。
しばらくして、
「ああ、高砂か」
って、呟いて納得してる。
ぱくぱく。
お魚を綺麗に食べてる。
食べてる。私の隣で！
「……美味しいですか？」
「食ってねーの？」
「はい」
「ん」
食え、って感じで私の前にお皿を置く。
大野さんの食べかけのグルクンを！
「じゃあ、ひとくち……」
「いっぱい、食べなよ」
「……」
ぱく。
食べてみたら、意外とあっさりしてて、なんだこれ？カレイみたいな？違うな、とにかく好きな味！
「これマジ美味しい。口入れた途端美味しい」
「翔くんみたい」
「え！あんな口いっぱいに入れないです！」
思わずそう言って、大野さんが私を初めてちゃんと見た。
「……」
「えっ……と……？」
清水が一つため息を吐いて、大野さんに話しかけた。
「こいつね、大野さんのこと好きなんですよ、挙動不審でスミマセン」
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2015年8月12日 7時
