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そのあとも清水は智くんを独占し続けた。
清水の釣り仲間の中に、智くんがよく利用する釣具屋さんの常連さんがいて、おれもそこ行ったことある、とか言って、
イカ用のルアーがどうのこうのって、楽しそうに話してた。
私は横で聞いてるだけだったけど。
結局智くんは新しいお友達を作って帰って行った。
清水は、ホクホク。
私はお友達になれて死ぬほど嬉しいのと同時に、すっごく仲良くなった二人にちょっとジェラシー。
「私も次の約束したかった……」
「ざまぁみろ！」
清水おすすめの釣具屋さんとか、釣り船の予約が簡単に出来るところを教えるとかで、次飲みに行く約束したらしい。
その日は家に帰って、月曜。
清水が出勤するなり私に声をかけてきた。
「A、今晩あけといて」
「急だね！なに！智くん関連？」
「家に来いよ」
たまたま近くで聞いてたももちゃんが不審な顔をした。
「……A、清水と付き合うことにしたの？」
「まさか！」
「ありえねー！」
ありえねーとはどういうことだ。
「ありえねーとか！私これでも黙ってたらモテるんだよ！後輩とか！取引先とか！」
「本性知らねー奴にだろ！」
「本性ってなによ、言いなさいよ、ほら！ほらほらほらほら！早く言いなさい！ほら！」
「そーゆーとこだよ！」
チッ。
聞こえるように舌打ちしてやった。
「大野くん来るのにその態度……」
「コラそれを早く言いなさいよ！」
「来る？」
「来る、とか言って、結局来なくて清水と二人きりになったりしたら最悪だなぁ」
睨み合う。
「ほんとだな、俺襲われそう」
「なんでそのセリフを私より先に言うのよ！」
ふたりでギリギリ睨み合ってたら後ろから係長に頭をパコンと叩かれた。
「仕事！」
「へーい……」
係長がいなくなったあともコソコソ話す。
「ほんとに智くん、来るの？」
「おれを疑って警戒するんならももとかも連れてこいよ」
「じゃあ行ってやってもいい」
「土鍋と鯛を持ってこいよ」
鯛めしか！
「鯛めし？旬じゃないけどいいの？」
「いいよ、我慢してやる」
「智くんに食べさせるんだから！」
そう言いながらも、ちょっとムフフ、って笑ったら清水がバカ、って言った。
実は清水は良い奴ってこと知ってるよ、モテるのもわかる。
ふ、と目が合った。
清水が、苦笑い。
ふと、新入社員の頃に清水と二人きりになった日のことを思い出して、慌てて記憶から追い出した。
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2015年8月12日 7時
