95、お見合い ページ25
和は、仕事が忙しくなって、
普通のマンションに住んでいられなくなった。
和を好きだという女の子が、和の家の前に張るようになって、そして。
私に、火の粉が飛んできた。
別れろとは言わないけど、
人気商売ってこと、ちゃんと理解して。
事務所の、偉い人から言われたって。
もともと出不精の和が、ますます外に出なくなっていく。
高校の時はよく言ってた、
早く結婚したいね、って言葉は。
どんどん減っていって、今は結婚の話をすることすら出来なくなって行った。
もうダメだ。
私たちが付き合っていくのは、本当に本当に、大変で。
大学時代の溝が埋まったと思ったら、今度は引き裂こうとする人。
私たちの運命を暗示してるかのようで。
私たちがギリギリ付き合ってる理由は
和の、
未来を変えてやる。
たったそれだけの、
目標だけで繋がってる。
これが、愛だと呼べるの？
膝を抱えて、帰らない和を、
和の部屋で待つ。
浮気してる？
だって、全然帰ってこない。
和が帰ってこない。
彼の周りには、
美しいことを職業にした人がたくさんいて、
和は、
そんな中で、
当たり前のように
輝きを放って。
あなたは光で私は陰。
どんどん痩せて、
憔悴していく私をみて、
最初は和と付き合ってることを喜んでた両親も、少しずつ。
彼に対する不満が募っていく。
「Aあのね、高校の時のワタナベさんの息子さん、覚えてる？」
「……」
彼の名前が母から出て、血の気が引いた。
「あちらから、Aさんが独身だったら是非お嫁さんにもらえないかって話で」
「……どうして……」
「あちらの息子さんね、高校時代からAのこと気に入ってくれてたみたいよ。今のお勤め先は大学病院で、お父様が開業医だからいづれは家の病院を……」
「……ごめん、頭痛がするから寝る」
部屋に、戻って、少し泣いた。
未来が、否応なく近づいてくる。
怖い。
怖いよ。
なんとなく、鏡を振り返って、ぎょっとした。
あの日の、私に似てる。
ああ、そうだ。
来年。私は、だれかと結婚するんだ。
震える指で、和に電話をかける。
これで、もし連絡がつかなかったら。
和が何も言わなかったら。
私たちは。
最後の賭けのつもりだったのに、和は電話に出なかった。
どうにでもなれ。
泣きながら、引き出しに仕舞った、オトナの和からの手紙を開いてみた。
……衝撃の真実が、そこには、書かれていた。
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やっち(プロフ) - おお。当たってました❗よしのさんの小説、色々違うお話を書かれてるので凄い尊敬します。もう感情移入して泣いてますよ。これからも色んなお話を楽しみにしています💕 (2021年10月4日 18時) (
レス) @page33 id: cc7865b69e (このIDを非表示/違反報告)
やっち(プロフ) - こんにちは。予想ですがカズは俳優になって主人公と結婚してると思います。絶対！ (2021年10月4日 16時) (レス) @page4 id: cc7865b69e (このIDを非表示/違反報告)
ちひろ - 高校生の時この作品に出会って、心動かされて24歳になってふいに夢に似たようなシーンが出てきて読み返しました。何度読み返しても素敵な作品。もう一度こんな気持ちにさせてくれてありがとうございます。 (2020年10月2日 21時) (レス) id: 7bf8bcbcd4 (このIDを非表示/違反報告)
みゅう(プロフ) - 大切な、前へ進むための力強いメッセージ。まさに、今のわたしに、また読み返してほしかったんです。将来、オトナになるとき、絶対また読んでほしいと当時おもっていました。消さないで置いていてください。そして改めてこんな面白くてステキな作品ありがとう (2020年2月19日 1時) (レス) id: 61dd42d003 (このIDを非表示/違反報告)
みゅう(プロフ) - キノキミ、No.1で好きな作品です。久しぶりに読み返せました、開放ありがとうございます(涙)そして二宮サン天才外科医役！(；▽；) (2020年2月19日 1時) (レス) id: 61dd42d003 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2015年6月14日 8時
