87、100年後も ページ17
「あの、私、ほんとは、好きな人が、いて」
「だれ」
「……二宮くん、のことが……」
「でもあいつは、……今日も彼女と話してたけど」
「……」
「あいつは、おススメできないよ、なんていうか、ちょっと……誰も本気にならないタイプというか……」
「そんなことない」
ああ、どうしよう。
なんて断わればいいの。
片想いって言っても、片想いならいいじゃん付き合おうとか言われそうだ。
「……彼女が言ってた」
「なんて？」
「好きな人ってやっぱり嘘でしょ、誰にも何事にも本気にならないのに、みたいなこと」
「そんなことないよ！」
「でもいつもちょっと冷めた目で……」
「そんなこと、ないんだってば……それは、彼女に本気にならなかっただけ！いつか和も本気になれる人に出会うんだから」
「それが、自分だといいたいの？」
……ああ、そうだ。
そうだよね。
それなら付き合ってるはずでしょ、っていいたいんだ。
だって私たちは、まだ。
「……付き合おうよ、俺ら。絶対、大事にするからさ」
「……」
「絶対、忘れさせてみせるから」
ああ、こんなこと、こんなカッコいい人に言われて、ぐらぐら来ない女なんているの？
でも私は。
未来を見に行ったの。
10年後も、変わらず愛してるよって。私、言ってた。
「あの、ワタナベくん。私、やっぱり」
「いい加減目を覚ませって」
いきなり、ぎゅうって抱きしめられて、ひいって喉が鳴った。
「や、離して」
「だめ」
「やだ、離して」
「こら、A！」
和の声。
和の声に、涙がじわ、ってこみ上げた。
「お前は俺のでしょ」
「……」
「初めて会ったときからずっと、10年後も俺のこと愛してるんでしょ」
「……は？」
「あの勢いじゃ、20年後も30年後も100年後も俺のこと愛してんでしょ！」
「……何いってんの？」
ワタナベくんが、和を見下ろした。
「俺あいつなんかよりすっげ頑張って、未来変えてやる！俺は、絶対に！Aのこと離さないからな！20年後も30年後も100年後も！」
「……和」
「報われなくても愛してるよ！天才外科医なんかに負けてたまるか！」
ああ。へなへなって、膝から落ちた。
涙が、ぽろぽろって、流れ落ちた。
「ごめんね、ワタナベくん」
「……意味わかんね……」
「ごめんね」
長い沈黙の末に、ワタナベくんが、言った。
「晴れでよかった、サッカーしてこよ」
「よーし、早く行ってらっしゃーい！」
和が、可愛く、言った。
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やっち(プロフ) - おお。当たってました❗よしのさんの小説、色々違うお話を書かれてるので凄い尊敬します。もう感情移入して泣いてますよ。これからも色んなお話を楽しみにしています💕 (2021年10月4日 18時) (
レス) @page33 id: cc7865b69e (このIDを非表示/違反報告)
やっち(プロフ) - こんにちは。予想ですがカズは俳優になって主人公と結婚してると思います。絶対！ (2021年10月4日 16時) (レス) @page4 id: cc7865b69e (このIDを非表示/違反報告)
ちひろ - 高校生の時この作品に出会って、心動かされて24歳になってふいに夢に似たようなシーンが出てきて読み返しました。何度読み返しても素敵な作品。もう一度こんな気持ちにさせてくれてありがとうございます。 (2020年10月2日 21時) (レス) id: 7bf8bcbcd4 (このIDを非表示/違反報告)
みゅう(プロフ) - 大切な、前へ進むための力強いメッセージ。まさに、今のわたしに、また読み返してほしかったんです。将来、オトナになるとき、絶対また読んでほしいと当時おもっていました。消さないで置いていてください。そして改めてこんな面白くてステキな作品ありがとう (2020年2月19日 1時) (レス) id: 61dd42d003 (このIDを非表示/違反報告)
みゅう(プロフ) - キノキミ、No.1で好きな作品です。久しぶりに読み返せました、開放ありがとうございます(涙)そして二宮サン天才外科医役！(；▽；) (2020年2月19日 1時) (レス) id: 61dd42d003 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2015年6月14日 8時
