46、空色の傘[side Satoshi] ページ46
「えっ！Aちゃんって、案外ケチ」
「あげないもん……」
「この傘、いいのに……」
「……だめ」
「あ、じゃあ、どこで売ってんの？」
「……」
「買いにいこっかな」
「教えない」
「えっ！」
「教えない……」
この期に及んで、意地悪いうAちゃん。
「やっぱ、ケチ」
「……」
「雨の日嫌いになったら、Aちゃんのせいだぞ！」
おれ、大人げない。
けど、Aちゃんには、おれみたいな奴がいたなあって、
雨の日に青空の傘なんかいらないくらい、思い出して元気になって欲しいってのは、
おれの、傲慢？
「じゃあ！」
「……じゃあ？」
「人生の９割以上傘、要らないんでしょ？」
「うん」
「じゃあ、邪魔だよね？傘、預かっててあげるよ！」
「……」
「雨の日は、待ってる、駅で待ってる」
「家から駅までどうすんの……」
は？おれ何いってんの。びっくりして、変な返事しちゃったぞ。
「今まで傘、要らなかったのにどうして急にそんな欲しがるの？」
「……えっと」
「じゃ、家まで、迎えに行く……家教えて」
「……うち？」
「私と、お友だちになってください……」
「お友だち……」
「……嫌？」
「……お友だち……」
「嫌なら、言ってください」
えっと。
もう、お友だちだと思ってたおれはどうしたら。
お友だちになったから、
次のステップにすすみたいなって気持ち、
伝えたよな？うん。えっと。
「いや」
Aちゃんが、悲しそうに、笑う。
もう、お友だちなんて、やなんだけど。
「彼氏になりたい場合どうしたらいいの」
「……」
「お友だちから始めるタイプ？」
Aちゃんが、涙をぽたん、と落とした。
きれーだな。
「……うん」
「じゃ、なる。お友だちになる」
「……大野さん」
「あ、仕事行かなきゃ……じゃね、Aちゃん」
にゃー。
三毛猫ちゃんが一声鳴く。
同時に、足を会社に向ける。Aちゃんも。
「え？」
「あ、今のは猫に言った」
「あのこ、オスなのに。私と同じ名前なんですね、凄い偶然……」
涙を拭ってちょっと笑いながら、言うAちゃん。
「偶然じゃないよ」
「え？」
「偶然じゃない。ずっと、見てた。猫がおれを差し置いて浮気してて、その浮気相手どんなやつだって、見たら、Aちゃんで」
「浮気？」
「Aちゃんって猫に聞いたら、返事したから」
「返事」
Aちゃんがくすくす笑う。
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なるちゃん(プロフ) - かぁ〜〜 うまい！！ はたと膝を打つ展開が気持ちよ過ぎる！ 出てくる人がみんな誰かに優しくて泣けてきます。 (2018年2月27日 9時) (
レス) id: a1fe1fb9b8 (このIDを非表示/違反報告)
とも(プロフ) - よしのさんの作品は…愛が溢れていて拝見していてホッとしながら心が癒されます(o^O^o)処女作品からここまで…よしのさんの魅力にはまってちょっとでも時間を見つけてはよしのさんワールドに入り浸りの毎日です(笑) (2017年9月10日 9時) (レス) id: b4753fc97a (このIDを非表示/違反報告)
ウサウサ - 三毛猫はオスじゃなくてメスしかいないんですよ (2017年7月20日 22時) (レス) id: 6d9c777ab6 (このIDを非表示/違反報告)
あかね - よしのさんの作品すごく好きです。いろんな解釈があって、何度か読むことによって気づくことも多い。いろんな表情があって、この作品大好きでした。わたしの解釈は、ねこってもしや元彼なんじゃないの？とかなんですけど、それだけで泣きたくなりました。 (2016年11月29日 1時) (レス) id: 4230ec427c (このIDを非表示/違反報告)
彩花(プロフ) - よしのさんほんとにすごい...こんな世界観を書けるのはよしのさんだけだと改めて思いました。またお気に入りの作品が１個増えました。雰囲気のある作品で、ひとつひとつの情景が目に浮かぶようでした。いつもありがとうございます、！ (2016年7月5日 1時) (レス) id: 9fafcdfc5a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：よしの
| 作成日時：2014年5月19日 23時
