39、失恋[side Satoshi] ページ39
「まって！ゆうくん、待って！」
Aちゃんの、悲痛な叫び声。
こんなことして、なんになるの。
だって、おれは、ゆうくんに似てるかもしれないけど、
でも存在して、飯食って寝て仕事して、そうやって、生きてる。
どうすんの、おれ。
でも、どうにかしてあげたいんだってば。
振り返る。
ごめん。
こんなうそついて、もっと傷ついたら、ごめん。
「なんてね、嘘でしょ、そんなわけ」
Aちゃんの頬が歪む。
「また、明日ね」
「明日？晴れたらどうするの？会えるの？」
「……晴れの日は、本屋の軒先に居るから、また会いに来てね」
いるのは、おれじゃなくて、猫のAちゃんだけど。
おれのかわりに、癒してあげて。
別に、避けてもいないのに、社内では、会えなかった。
じゃ、避けたら、どうなる？
きっと、会わない。
そっか、
避けたら、いいんだ。
そして、そのまま、おれはゆうくんのフリしてればいいんだ。
そしたら、
ゆうくんと別れたって、心を片すことできるでしょ。
新しい一歩を踏み出せる。
おれと一緒に歩くことは、できないけど、
Aちゃんが、幸せにならなきゃあ。
おれは、ただの失恋で済む話。
Aちゃんはこのままじゃあ、失恋すらできないんだから。
ずぶぬれになって、会社に戻ったら、ぎゃあって言われる。
営業一課の可愛いおっさんに、帰れ、今すぐ帰れ！とか言われる。
ひでえ。
「熱出すよ！看病しないよ！」
「ニノにはしたのに……あつーい看病も……うふふ」
「……大野さんのばかー！カズのバカー！」
「そうだ、あいつが一番のバカ！」
居ない人をバカバカ言う、営業一課の櫻井朝霧のゴールデンコンビ。
こいつらのことも知らないAちゃんってほんとにこの世の住人か？
結局、しばらくして、無理矢理帰らされる。
次の日の朝、あんな状況でも全然風邪引かないなんて、
おれって不死身。
最初からおれと付き合えばよかったのに、Aちゃんのバカ。
ふっと本屋を見たら、Aちゃんが居た。
思わず、いつも猫のAちゃんが居る倉庫に隠れちゃった。
昨日、あんなこと言ったせいで。
どんな顔すりゃいいんだ。
「智くん？」
ん？なんで猫におれの名前呼んでんの。
猫もなんだ？って顔してるし。
「智くんなの？」
そんなわけないでしょ。
毎日智くんくんが会いに来てあげたよって言ってたの、覚えてんだな、かしこいじゃん。猫。
「幸せになってもいいんだよって言ってくれたの、キミ？」
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なるちゃん(プロフ) - かぁ〜〜 うまい！！ はたと膝を打つ展開が気持ちよ過ぎる！ 出てくる人がみんな誰かに優しくて泣けてきます。 (2018年2月27日 9時) (
レス) id: a1fe1fb9b8 (このIDを非表示/違反報告)
とも(プロフ) - よしのさんの作品は…愛が溢れていて拝見していてホッとしながら心が癒されます(o^O^o)処女作品からここまで…よしのさんの魅力にはまってちょっとでも時間を見つけてはよしのさんワールドに入り浸りの毎日です(笑) (2017年9月10日 9時) (レス) id: b4753fc97a (このIDを非表示/違反報告)
ウサウサ - 三毛猫はオスじゃなくてメスしかいないんですよ (2017年7月20日 22時) (レス) id: 6d9c777ab6 (このIDを非表示/違反報告)
あかね - よしのさんの作品すごく好きです。いろんな解釈があって、何度か読むことによって気づくことも多い。いろんな表情があって、この作品大好きでした。わたしの解釈は、ねこってもしや元彼なんじゃないの？とかなんですけど、それだけで泣きたくなりました。 (2016年11月29日 1時) (レス) id: 4230ec427c (このIDを非表示/違反報告)
彩花(プロフ) - よしのさんほんとにすごい...こんな世界観を書けるのはよしのさんだけだと改めて思いました。またお気に入りの作品が１個増えました。雰囲気のある作品で、ひとつひとつの情景が目に浮かぶようでした。いつもありがとうございます、！ (2016年7月5日 1時) (レス) id: 9fafcdfc5a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：よしの
| 作成日時：2014年5月19日 23時
