31、きれい[side Satoshi] ページ31
それから、２週間くらいたった日。
天気予報は、朝から雨みたいなこと、ＴＶで言ってたけど、やっぱり面倒でそのまま外に出る。
駅に着いたら、翔ちゃんがいた。
よかった、これで雨に降られない。
「さとしくんおはよ！」
「はよ」
「早いね！」
「うん、たまたま早起きした」
「そうなんだ、雨降りそうだからちょうどいいかも」
「やっとその折り畳み傘使う日が来た？」
「買って早半年、一度も使うチャンスがございません！晴雨兼用傘にすべきだったか」
「日傘？」
「フリルつきにすればよかった」
笑いながら駅から出ようとしたら、見覚えのある、寂しそうな背中。
Aちゃんだ。
「あ」
「……ん？」
「おはよ」
今日は、泣きそうな顔してない？
顔を覗いて、そのまま、並んで歩き出す。
不思議そうに翔ちゃん見てる。誰？って顔。
「おはようございます」
「あ、経理の。おはようございます」
二人が挨拶し合いっこ。
翔ちゃん、Aちゃんの部署を、知ってんだ。へえ。
人の顔をおぼえるのが特技だもんな。
ちょっと歩いたら、いきなり翔ちゃんが立ち止まる。
「いや、違う、うっかり会社に行こうとしてるよ、俺。待ち合わせだった」
「ん？」
「じゃあ、行ってきます！」
走って駅の構内に戻る、翔ちゃん。
今日、直行って言ってたもんな。松本くんと待ち合わせ。
丁度、翔ちゃんが駅に入ったのを天が確認した後、
ってくらいのタイミングで雨が降ってきた。
「ほら、すごいでしょ、翔ちゃん、雨にあたらない人生なんだよね」
「ほんとに晴れ男なんですね、目の当たりにすると驚愕です」
「折りたたみ傘活躍できないな。軽量のグラスファイバーで大きいの。宝のもち腐れ」
「ふふ」
ほらね、笑うとびっくりするくらい、可愛いんだ。
ずっと笑ってたらいいのに。
「よかったら入って下さい」
「ありがと。傘、持つ」
青空の、浮かれた模様の傘の柄を持ったら、ちょっと、手が当たった。
すっげ冷たい。
「きれい」
きれい？なんのこと。
見下して、何が？って聞く。
「大野さんの手」
そういわれて、Aちゃんの手を見下ろす。
猫のAちゃんをするする撫でる指も、笑うときに、ちょっと口許に手をやる指先も。
細くて、繊細で、いい感じ。
俺の手より、きみの手の方が、きれい。
ひんやりして、
まるで。
……この世のものではないような。
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なるちゃん(プロフ) - かぁ〜〜 うまい！！ はたと膝を打つ展開が気持ちよ過ぎる！ 出てくる人がみんな誰かに優しくて泣けてきます。 (2018年2月27日 9時) (
レス) id: a1fe1fb9b8 (このIDを非表示/違反報告)
とも(プロフ) - よしのさんの作品は…愛が溢れていて拝見していてホッとしながら心が癒されます(o^O^o)処女作品からここまで…よしのさんの魅力にはまってちょっとでも時間を見つけてはよしのさんワールドに入り浸りの毎日です(笑) (2017年9月10日 9時) (レス) id: b4753fc97a (このIDを非表示/違反報告)
ウサウサ - 三毛猫はオスじゃなくてメスしかいないんですよ (2017年7月20日 22時) (レス) id: 6d9c777ab6 (このIDを非表示/違反報告)
あかね - よしのさんの作品すごく好きです。いろんな解釈があって、何度か読むことによって気づくことも多い。いろんな表情があって、この作品大好きでした。わたしの解釈は、ねこってもしや元彼なんじゃないの？とかなんですけど、それだけで泣きたくなりました。 (2016年11月29日 1時) (レス) id: 4230ec427c (このIDを非表示/違反報告)
彩花(プロフ) - よしのさんほんとにすごい...こんな世界観を書けるのはよしのさんだけだと改めて思いました。またお気に入りの作品が１個増えました。雰囲気のある作品で、ひとつひとつの情景が目に浮かぶようでした。いつもありがとうございます、！ (2016年7月5日 1時) (レス) id: 9fafcdfc5a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：よしの
| 作成日時：2014年5月19日 23時
