30、相合い傘[side Satoshi] ページ30
雨、嫌いなのかな、とは思ってたけど、憎んでるみたいな顔をした。
会社について、傘からふいっと飛び出したら、Aちゃんが、あは、って笑った。
「ん？」
「いえ、なんか、可愛い」
手を口許にやって、キラキラって笑う。
モノクロのAちゃんの唇と頬が、
薄紅色に染まる。
「ね、君」
「はい？」
「名前は？」
「柚木です」
「下の名前は？」
「A……」
「ん。じゃ、またね」
名前は、しってた。
柚木って言うのか。ふうん。
ちょっと、楽しい気分。
きみが、昔の映画みたいな、モノクロの世界に住んでなくて、
こっちがわに生きてるってだけで、
なんだかちょっと嬉しくなった。
「ふんふふん♪ふんふふーん♪」
「あれ？ごっきげーん！」
相葉ちゃんが近づいてくる。
「んあ？」
「ご機嫌じゃーん！」
「そおかぁ？」
「やっぱりー？相合い傘ー？したからかなぁー？んんんー？」
「…………え！みてた？」
「駅から見てたよぅー！うりゃー！」
相葉ちゃんがくっついてくる。
「見てたのかっ」
「みてましたぁ！」
「じゃ、傘いれろぉ！」
「邪魔しちゃ悪いかな？と思ってね？ね？」
「……もー」
「あのこ、どこの部署？名前は？」
相葉ちゃんがニヤニヤ笑ってる。
「部署しらない。猫ちゃん」
「ねこちゃんんんん？」
「猫ちゃん！」
「ねこ？どんな字？名字は？なに、ねこちゃん？ねねこちゃん？ん？」
相葉ちゃんがうるさい。
けど、ちょっと、楽しい気分。
それから数日後の夕方。
今すぐ領収書持ってこいって、経理から電話かかってきた。
今、折り返しの電話まち。もうすぐかかってくるのに！
「えっ！今、無理」
「じゃ、おれ、行ってくるぅ」
相葉ちゃんがご機嫌で言う。
「えっ、待って！おれ行くからおいといて！」
「いってきまーす！」
「待って！」
相葉ちゃんが走って行った。
うそ。
Aちゃんのことバレる。
そわそわして、相葉ちゃんの帰りを待つ。
取引先からかかってきた電話を切って、スケジュールを組み込む。
「ただいまぁ！」
あ、帰ってきた。
「おかえり。ありがと」
「みーちゃった！経理のこねこちゃん！」
「……」
AちゃんってAちゃんから名前とったってバレたか？
息をとめて、冷やかされるのを待ってたら。
「あ！名前聞くの忘れてたぁ！」
よかった、さすが、相葉ちゃん。
ほう、とため息がでた。
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なるちゃん(プロフ) - かぁ〜〜 うまい！！ はたと膝を打つ展開が気持ちよ過ぎる！ 出てくる人がみんな誰かに優しくて泣けてきます。 (2018年2月27日 9時) (
レス) id: a1fe1fb9b8 (このIDを非表示/違反報告)
とも(プロフ) - よしのさんの作品は…愛が溢れていて拝見していてホッとしながら心が癒されます(o^O^o)処女作品からここまで…よしのさんの魅力にはまってちょっとでも時間を見つけてはよしのさんワールドに入り浸りの毎日です(笑) (2017年9月10日 9時) (レス) id: b4753fc97a (このIDを非表示/違反報告)
ウサウサ - 三毛猫はオスじゃなくてメスしかいないんですよ (2017年7月20日 22時) (レス) id: 6d9c777ab6 (このIDを非表示/違反報告)
あかね - よしのさんの作品すごく好きです。いろんな解釈があって、何度か読むことによって気づくことも多い。いろんな表情があって、この作品大好きでした。わたしの解釈は、ねこってもしや元彼なんじゃないの？とかなんですけど、それだけで泣きたくなりました。 (2016年11月29日 1時) (レス) id: 4230ec427c (このIDを非表示/違反報告)
彩花(プロフ) - よしのさんほんとにすごい...こんな世界観を書けるのはよしのさんだけだと改めて思いました。またお気に入りの作品が１個増えました。雰囲気のある作品で、ひとつひとつの情景が目に浮かぶようでした。いつもありがとうございます、！ (2016年7月5日 1時) (レス) id: 9fafcdfc5a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：よしの
| 作成日時：2014年5月19日 23時
