28、出逢い[side Satoshi] ページ28
「Aちゃんで、にゃんこ先生で、ミケでつんこさんは、オスだった……」
「えっ！血統書つきだったら中古の家買える？あいつが？」
翔ちゃんが目を丸くして、ニノが悪い顔で笑った。
「あ、今ちょっといけないこと考えちゃったよ！触らせてくれないのに！」
「でもさぁ、ミケってあれでしょ？本屋の招き猫になってるから餌貰ってるだけで野良猫なんでしょ？大野さん以外なつかないんだからもらっちゃったら？」
相葉ちゃんがニコニコ笑って、言う。
「俺よりなついてるやついる……キスしようとして猫パンチもらってた。おいらもまだ猫パンチもらったことないのに……」
「抱き上げたってことお？」
相葉ちゃんがびっくりしてる。
「それ誰？」
「…………知らない」
あ、嘘ついちゃった。
「女の子？」
ニノがキラキラの目で、俺を見る。
「うん」
「可愛い？」
「顔はよくわかんない」
「大野さん、人事部から内線２番でーす」
「はい、散った散った！……お電話代わりました」
「……お忙しいところ失礼します。交通費の精算なんですけど、先日頂いた領収書なんですが、」
あ。Aちゃんだ。猫じゃない方。
電話を切ったあと、なんとなく、涼しい風が通り過ぎたみたいな、感情。
さわさわさわさわ。
あれから何回かすれ違ったりしてるのに、全然目が合わない。
よく見てたら、誰とも関わらないみたいだ。
いつも、黒い服。
俯いて歩く笑わない横顔。
一人だけ、色を無くした世界で生きてる。
左手に鈍く光る、指輪。
天気予報通りに必ず持ってる空色の傘。
猫のAちゃんと、密やかな逢瀬。
まるで、
半分だけしか、
この世に生きてないような、
危うい存在感。
今にも消えそうな。
ある日のこと、
雨に降られて、本屋の軒先で雨宿り。
走って行こうと思って、ふと、気づく。
取引先に持っていくつもりで描いた絵。
雨に濡れたら、滲む。
まずい。
スーツの中に入れて走る？
コンビニで傘を買うか、
うーん。
猫のAちゃんは、雨が降ってきたらさっさといなくなった。
雨、止まないかな？
無理か。
結構激しく降ってる。
何気なく駅の方に目を向けたら。
そこだけ青空を切り取ったような傘の下。
Aちゃんが凍りついたみたいに俺を見てた。
Aちゃんの大きな目が揺れて、
口が小さく動いた。
……くん？
初めて目が合った。
頬が、ちょっと緩んだ。
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なるちゃん(プロフ) - かぁ〜〜 うまい！！ はたと膝を打つ展開が気持ちよ過ぎる！ 出てくる人がみんな誰かに優しくて泣けてきます。 (2018年2月27日 9時) (
レス) id: a1fe1fb9b8 (このIDを非表示/違反報告)
とも(プロフ) - よしのさんの作品は…愛が溢れていて拝見していてホッとしながら心が癒されます(o^O^o)処女作品からここまで…よしのさんの魅力にはまってちょっとでも時間を見つけてはよしのさんワールドに入り浸りの毎日です(笑) (2017年9月10日 9時) (レス) id: b4753fc97a (このIDを非表示/違反報告)
ウサウサ - 三毛猫はオスじゃなくてメスしかいないんですよ (2017年7月20日 22時) (レス) id: 6d9c777ab6 (このIDを非表示/違反報告)
あかね - よしのさんの作品すごく好きです。いろんな解釈があって、何度か読むことによって気づくことも多い。いろんな表情があって、この作品大好きでした。わたしの解釈は、ねこってもしや元彼なんじゃないの？とかなんですけど、それだけで泣きたくなりました。 (2016年11月29日 1時) (レス) id: 4230ec427c (このIDを非表示/違反報告)
彩花(プロフ) - よしのさんほんとにすごい...こんな世界観を書けるのはよしのさんだけだと改めて思いました。またお気に入りの作品が１個増えました。雰囲気のある作品で、ひとつひとつの情景が目に浮かぶようでした。いつもありがとうございます、！ (2016年7月5日 1時) (レス) id: 9fafcdfc5a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：よしの
| 作成日時：2014年5月19日 23時
