13、心変わり ページ13
その次の日も、雨だった。
なのに。
大野さんは、来なかった。
櫻井さんにバッタリ会ったから聞いてみたら、今日は直行直帰だって。
大野さんのいない雨の日なんて。
あさ、目が覚めたとたん雨が降ってて、ちょっと嬉しかったなんて。
ゆうくんごめん。
雨の日、嫌いじゃなくなった。
だって、大野さんに、会える。
仕事を終えて、傘をぽん、とさす。
水色の傘。
駅に向かって歩く。
俯いた、まま。
本屋の軒先の猫ちゃんといつも目が合うのは、
私がいつもいつも俯いてるから。
空色の傘をさしても、
私が目を上げなかったら、
私の下は晴れってこと、気付かない。
そんなこと知ってる。
大野さんは、
わたしに、空色が似合うって言った。
『空色とか似合いそうなのにね』
『真夏の、空。青と、白と、キラキラ。』
心変わりした訳じゃないの。
私はまだゆうくんの彼女のまま。
だけど、大野さんに惹かれてるのは、どうしても否定できなくて。
これ、浮気かな？
ゆうくんは、怒る？
心変わりを、責める？
ね、心変わりを、責めて。
私の心変わりを責めてよ？
呪ってもいいよ。
恨んでもいい。
うらめしやって、出てきて。
なんでもいいから、会いたいよ。
会いたい。
会いたいよ、ゆうくん。
だって、忘れちゃう。
忘れちゃうよ、ゆうくん。
どうしようもなく込み上げる涙を傘で隠して、
痛みに、耐えてたら。
「Aちゃん」
大野さんの声が、聞こえた。
「大野さ……」
「どうしたの」
雨の中を走ってくる、大野さん。
そのままの勢いで私の傘の中に入ってきて、
私の顔を覗く。
「やっぱり、泣いてる」
「……」
「泣いてる気がした」
「どうして、雨の日にしか会えないの？」
「……」
「ゆうくんのこと、忘れそうなの。どうしよう、忘れないって誓ったのに！」
「……うん」
「大嫌いな雨の日を待つようになったの、大野さんに会えるかなって。でもね、そうしたら、今度は晴れてても寂しいの」
「……」
「ゆうくん……」
「A」
はっ、として、目をあげる。
「幸せに、なってもいいんだよ？」
「……」
「俺のこと忘れないでね、でも、幸せになるんだよ、ね？わかった？」
……え？
「……ゆうくん？」
「……ん？」
「ゆうくん？ほんとはゆうくんなの？」
悲しい目。とっても、悲しい目で。
「さよなら」
動けない、立ちすくむ。
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なるちゃん(プロフ) - かぁ〜〜 うまい！！ はたと膝を打つ展開が気持ちよ過ぎる！ 出てくる人がみんな誰かに優しくて泣けてきます。 (2018年2月27日 9時) (
レス) id: a1fe1fb9b8 (このIDを非表示/違反報告)
とも(プロフ) - よしのさんの作品は…愛が溢れていて拝見していてホッとしながら心が癒されます(o^O^o)処女作品からここまで…よしのさんの魅力にはまってちょっとでも時間を見つけてはよしのさんワールドに入り浸りの毎日です(笑) (2017年9月10日 9時) (レス) id: b4753fc97a (このIDを非表示/違反報告)
ウサウサ - 三毛猫はオスじゃなくてメスしかいないんですよ (2017年7月20日 22時) (レス) id: 6d9c777ab6 (このIDを非表示/違反報告)
あかね - よしのさんの作品すごく好きです。いろんな解釈があって、何度か読むことによって気づくことも多い。いろんな表情があって、この作品大好きでした。わたしの解釈は、ねこってもしや元彼なんじゃないの？とかなんですけど、それだけで泣きたくなりました。 (2016年11月29日 1時) (レス) id: 4230ec427c (このIDを非表示/違反報告)
彩花(プロフ) - よしのさんほんとにすごい...こんな世界観を書けるのはよしのさんだけだと改めて思いました。またお気に入りの作品が１個増えました。雰囲気のある作品で、ひとつひとつの情景が目に浮かぶようでした。いつもありがとうございます、！ (2016年7月5日 1時) (レス) id: 9fafcdfc5a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：よしの
| 作成日時：2014年5月19日 23時
