33.泡沫の夢 ページ36
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Aは普通に出歩いていれば人目につく、お職の地位を持つ者が目を引くのは当然だ。人目のつかない路地を通って、いつの日か亜簾と雨宿りをした神社に来た。
自分の懐には、亜簾に貰った簪がある。それを取り出して、飾を握り潰してしまおうかと思った。いや、いっその事賽銭箱にでも投げ入れてしまうか。
出来ない。苦しい、胸が張り裂けるようで辛い。
Aの背後に、ある手が伸びていた。
「こんな所にいたのか」
「…?」
簪がそこに落ちた。
神社の社の中に、Aはつれていかれた。Aの息は荒く、抵抗する余裕もない。先程、振り向きざまに口付けとともに口内に薬を流し込まれたのだ。無論、身体の感覚を麻痺させ性への意識を増進させるものである。
腕を掴むのは、東雲楼の髪結いにくる男だった。
物のように社の床にAは投げられてしまう、ゆっくりとしか動けなくなってしまったAはそれを悟る。ぼうっとした意識の中で、男は自らの熱を晒し、自分に近づく。
どうやら、この男に抱かれるようだ。
「はぁっゔぅっ!」
唐突に慣らしもせずに、押し込まれた熱に吐き気が湧いてくる。しかしながら、薬の効果は上々らしい痛みがじんわりと快楽に変わっていく。生理的な涙が、溢れてくる。
「思ったより緩いですねィ…どうでさァ嫌いな男に抱かれる気分は」
「う…ぅ、んあっんんっ」
「気持ちが良すぎて言葉も出ませんかィ…っ」
ぶつけられる熱と意識とは逆にAの身体は刺激を欲してしまう。せめてもの抗いとしては男の背をこれでもかと言うほど爪を立てていた。
「A…!!」
近くで、亜簾の声がAの耳には聞こえた。
嗚呼願わくば自分を救って欲しい。だが、かような姿など見られたくもない。
「ぁ…れぇ、…さまっ」
「他の男の名前を出すとはいい度胸してまさァ」
「い゛っゃ…ぁ、あ!」
すぐ外にきっと亜簾がいるのに、戸の外の彼は気付いていないのか。手を伸ばしても、何も掴めない。
貪り食うように、男は手をとめない。身体がおかしくなってしまいそうだ。熱い、熱い、苦しい、気持ち悪い。
「ん…!やらっあ゛ぅ…あ、れんさまっ!」
男は腰の動きを止めようとはしない。それどころか激しさを増していくばかりだ。Aは社の外をずっと見つめていた。そして、ゆっくりと影が現れこちらを覗いていた。
驚きで動けなくなっている亜簾と組み敷かれているAの目が合った。
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Ria。(プロフ) - 初めて見たのですが、、ッ好きすぎます。尊すぎます。こんな尊い小説があってもよろしいのでしょうか。ええ、もちろんあってよろしいです。この素晴らしい小説に出会えて良かったです!! (2022年4月29日 18時) (レス) @page46 id: 6d33a476b4 (このIDを非表示/違反報告)
大手裏剣(プロフ) - 藤雲ルアリナさん» あああ!お喜ばれる小説を書けていたようでとても嬉しいです!やる気でますね……頑張りますね! (2020年4月8日 15時) (レス) id: fe109e5f3f (このIDを非表示/違反報告)
藤雲ルアリナ - 世界観、空気、文体、ストーリー、もう何もかも好みです!毎回更新楽しみにしてます! (2020年4月8日 0時) (レス) id: 3165ea2c89 (このIDを非表示/違反報告)
大手裏剣(プロフ) - 氷浦メグさん» ひえぇっありがとうございます泣 これからも暇潰しにでも覗きに来てください… (2020年3月13日 17時) (レス) id: 54569fedb3 (このIDを非表示/違反報告)
氷浦メグ(プロフ) - 初見です。尊いですありがとうございます! (2020年3月13日 13時) (レス) id: 3357bae399 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:愛之助 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/oh19years/
作成日時:2019年2月16日 22時