32.泡沫の夢 ページ35
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座敷から声が聞こえた、若葉が来たのかと思ったが、声が止んだ。Aは様子を伺おうかと、少し開いている戸から中を覗いた。
「な、っ」
若葉が亜簾と接吻をしていた。亜簾の目は少し開いていて、手は若葉の着物を掴んでいた。自分が信じたものが崩れていく音がした。
騙されていたのは、自分。
夢を見させられていたのは自分。
どうして自分はこんなに苦しい。
亜簾が好きだからだろう。
この場にいるのが耐えきれなくなった。胸が張り裂けそうで、辛い。戸の傍に皿を置いてその場から気付かれないようにそっと離れた。
逃げた。逃げた。
「何してんだよ！」
ふわふわとした意識が次第にハッキリして亜簾は若葉を突き飛ばした。流石にいつもの様に冷たいとも思わせる平静でも居られない。
最初はAが接吻をせがんできていたのかと思っていた、それに寝ていたのだから意識はダメになっている。
「ぁ…」
涙目になりながら、震えた手をこちらに伸ばしてくる。亜簾は、躊躇せずに払った。
「亜簾様…っ」
「もう俺に近付くな。帰ってくれ」
若葉は言葉で表せないぐらいにショックを受けているようだが、すぐに座敷から出ていった。
だいぶ熱も下がって、気分も少し楽になってきたというのに、苛立って仕方ない。
これだから、女は本当に嫌いなんだ。
「若旦那、失礼しんす」
どうやら朝食を持ってきてくれたようだが、居たのは朝霧だけだった。少し、またAが来るのではないかと思っていたのだが。
「…朝霧か。華永野は？」
「ここに来たかと思っておりんしたが…座敷の前に皿を置いていったようでありんす」
「それはいつだ…？」
「？…若旦那のお連れ様が帰る前でござんしょうか。気を使ってはいらなかったかもしりんせん。
兄さん、支度がありんすから早う見つかるとええんですが」
Aはここに来ていたのかもしれない。見ていたとしたら？Aはどこに行ったんだ？
まだ少し気分は悪いが、気だるい身体を支え座敷を出ようとした。
「華永野を探してくる」
「わ、分りんした。
若旦那、これは食べていきなんし」
形の良いおにぎりを皿から取り、羽織を肩にかけ、足元ふらつかせながら、見世を出ていった。
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いつもありがとうございます(^^)
コメント嬉しいです…泣
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Ria。(プロフ) - 初めて見たのですが、、ッ好きすぎます。尊すぎます。こんな尊い小説があってもよろしいのでしょうか。ええ、もちろんあってよろしいです。この素晴らしい小説に出会えて良かったです！！ (2022年4月29日 18時) (
レス) @page46 id: 6d33a476b4 (このIDを非表示/違反報告)
大手裏剣(プロフ) - 藤雲ルアリナさん» あああ！お喜ばれる小説を書けていたようでとても嬉しいです！やる気でますね……頑張りますね！ (2020年4月8日 15時) (レス) id: fe109e5f3f (このIDを非表示/違反報告)
藤雲ルアリナ - 世界観、空気、文体、ストーリー、もう何もかも好みです！毎回更新楽しみにしてます！ (2020年4月8日 0時) (レス) id: 3165ea2c89 (このIDを非表示/違反報告)
大手裏剣(プロフ) - 氷浦メグさん» ひえぇっありがとうございます泣 これからも暇潰しにでも覗きに来てください… (2020年3月13日 17時) (レス) id: 54569fedb3 (このIDを非表示/違反報告)
氷浦メグ(プロフ) - 初見です。尊いですありがとうございます！ (2020年3月13日 13時) (レス) id: 3357bae399 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：愛之助
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/oh19years/
作成日時：2019年2月16日 22時
