23.徒花 ページ26
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「お久しゅうござんす、若旦那」
翌日、訪れた亜簾をもてなしたのは朝霧だった。今回、Aは一切客を取っていなかったが、朝霧は嘘を吐いて1人でここへ来たのだ。
「久しぶりだな、朝霧。華永野は…ほかの客か？」
「はい…」
亜簾は虚しそうな顔をして、酒を煽る。そして、飲み干すとどん、と力強く床に盃を置く。朝霧は、ふぅ、と息をつくと亜簾にこう言った。
「若旦那は兄さんのことを好いておりんしょう？」
「…嗚呼。そんなのさっさと諦めろ、なんて朝霧は思ってるんだろ、そりゃそうだよな」
亜簾は自嘲気味だ笑いを零し、徳利を傾け盃に注ぐとまた酒を煽ろうとする。が、盃を持った手はか細い腕の朝霧に止められる。
「思っていんせん、寧ろ逆でありんす。
今、兄さんを苦しめてるのは若旦那でありんす。ですが、兄さんを喜ばせているのも若旦那」
怪訝な目で、亜簾は朝霧を見張る。
「…どうしろって言ってんだ」
「好いているなら好いているでさっさと物にしてほしいんでござんす。何を躊躇していんす」
はっきりと真っ直ぐに言葉を伝える、朝霧は自分の兄貴分のことを大切に思う気持ちが痛いほど伝わってきた。人の心にあまり触れて来なかった亜簾にも。
「華永野といると、自分で自分を抑えられなくなって、華永野を壊すんじゃないかと思ってる」
朝霧は、驚いた様子で亜簾の話を聞く。
「華永野にもっと触れたくなって。
でも、あんな行為するのなんて欲望に溺れてるようで、何も感じないだろ。
こんな俺じゃ…」
自暴自棄な亜簾の肩を掴み、伝わるように静かな声色で朝霧は話す。
「わっちらがさせられる行為は間違いなく、欲望にまみれていんしょう。
ですが、若旦那全てがそうではありんせんよ。愛しい人を求めるのは愛でありんす。若旦那の過去に何があったのかは分りんせんが。若旦那は間違っておりんせん」
亜簾は朝霧が淡々と話している間一言も何か言うことは出来なかった。自分の中の何かが溶けるような感覚だった。
「なんで朝霧、お前は…そんなに」
亜簾はその先のことをなんと言えばいいのか分からず、黙ってしまった。朝霧は察した。
「わっちの全ては兄さんだけでありんす」
その笑顔は清々しい程の、遊男になるものには相応しくない満面の笑みだった。
「さてと、若旦那。兄さんは手強いでありんすからわっちも協力してやりんしょう」
ふっ、と笑顔は消え悪巧みするような笑顔を朝霧は浮かべた。
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Ria。(プロフ) - 初めて見たのですが、、ッ好きすぎます。尊すぎます。こんな尊い小説があってもよろしいのでしょうか。ええ、もちろんあってよろしいです。この素晴らしい小説に出会えて良かったです！！ (2022年4月29日 18時) (
レス) @page46 id: 6d33a476b4 (このIDを非表示/違反報告)
大手裏剣(プロフ) - 藤雲ルアリナさん» あああ！お喜ばれる小説を書けていたようでとても嬉しいです！やる気でますね……頑張りますね！ (2020年4月8日 15時) (レス) id: fe109e5f3f (このIDを非表示/違反報告)
藤雲ルアリナ - 世界観、空気、文体、ストーリー、もう何もかも好みです！毎回更新楽しみにしてます！ (2020年4月8日 0時) (レス) id: 3165ea2c89 (このIDを非表示/違反報告)
大手裏剣(プロフ) - 氷浦メグさん» ひえぇっありがとうございます泣 これからも暇潰しにでも覗きに来てください… (2020年3月13日 17時) (レス) id: 54569fedb3 (このIDを非表示/違反報告)
氷浦メグ(プロフ) - 初見です。尊いですありがとうございます！ (2020年3月13日 13時) (レス) id: 3357bae399 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：愛之助
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/oh19years/
作成日時：2019年2月16日 22時
