17.雪月花# ページ20
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Aが振新だった頃だ。Aが世話をしていた兄貴分の遊男が客と密談をしていた。この男吉原から逃げよう、という話をAは聞いてしまったのだ。
足抜けはご法度。男吉原だろうと女吉原と同様だった。もしその場に居合わせたとしたら必ず報告。しなければ、自分が仕置きを受けるのである。
「兄さん、足抜けはご法度。やめなんし」
「見逃してくれA。わっちが面倒みてやったんだ」
Aは情けで止めさせようとした。だが、相手の気持ちが強かった。結局、Aは内儀にそれを伝えた。
後日、兄貴分の遊男は顔以外を傷付けられた。裸で水に付けられ、食事を与えられず、衰弱していった。その男はAを憎み続けた。
「お前はおにだ。感情のない化け物が！！」
血走った目で見るあの目が何よりも怖い。今では、よくあれに耐えられたと思う。
若葉に人形と言われて、随分昔のことを思い出した。自分が嫌になる。
平気で数え切れないもの達を蹴落としてここに辿り着いた。人間である方が不思議なのかもしれない。
「人形、おに、化け物…」
Aは何も持たず、外を出ていた。肩にぽつりぽつりと雫が付き始めた。雨だ。Aは空を見上げて、片手で目を覆った。次第に雨が強くなり、身体が冷えていく。
それでも、Aは気にもとめずに立ち竦む。だが、Aの腕を誰かが掴んだ。Aが目を向けた先には番傘を持った亜簾が立っていた。
「…A…ッ華永野…？」
亜簾にはAが泣いているようにも見えた。そのまま亜簾は腕を引いて近くの神社まで連れていき、雨宿りをさせた。
「なにしてたんだ？」
「ただの散歩さ」
Aは気持ちを悟られないようにするのに必死だった。亜簾も気まずさに目を合わせられなかった。そして、お互いにその空気に耐えきれなくなったか同時に話し掛けた。
「アンタ先に言えよ」
「いや、大したことじゃない。華永野は？」
Aは源氏名で呼ばれることにぐっと違和感を感じ、押し黙ったが口を開いた。
「……縁談を受けるらしいな、こんなとこに来ない方がいいんじゃないか」
「なんで知ってるんだ？」
Aは自分で言って、寂しく思って内心驚いた。混乱して何が言いたいのか分からないから何も言えなくて黙った。
亜簾は自分の着物の懐に入れてある簪を着物の上から撫で、出そうとしてやめた。
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Ria。(プロフ) - 初めて見たのですが、、ッ好きすぎます。尊すぎます。こんな尊い小説があってもよろしいのでしょうか。ええ、もちろんあってよろしいです。この素晴らしい小説に出会えて良かったです！！ (2022年4月29日 18時) (
レス) @page46 id: 6d33a476b4 (このIDを非表示/違反報告)
大手裏剣(プロフ) - 藤雲ルアリナさん» あああ！お喜ばれる小説を書けていたようでとても嬉しいです！やる気でますね……頑張りますね！ (2020年4月8日 15時) (レス) id: fe109e5f3f (このIDを非表示/違反報告)
藤雲ルアリナ - 世界観、空気、文体、ストーリー、もう何もかも好みです！毎回更新楽しみにしてます！ (2020年4月8日 0時) (レス) id: 3165ea2c89 (このIDを非表示/違反報告)
大手裏剣(プロフ) - 氷浦メグさん» ひえぇっありがとうございます泣 これからも暇潰しにでも覗きに来てください… (2020年3月13日 17時) (レス) id: 54569fedb3 (このIDを非表示/違反報告)
氷浦メグ(プロフ) - 初見です。尊いですありがとうございます！ (2020年3月13日 13時) (レス) id: 3357bae399 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：愛之助
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/oh19years/
作成日時：2019年2月16日 22時
