11.雪月花 ページ14
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Aは薄く顔を紅くした。亜簾は今までの客とは違う。考えが読めない。遊男のAをどこまでも知りたがる不思議な客だ。だが、Aは自分がどこか惹き付けられていることに気づいていた。そして、何故かその感情に恐怖を抱いている。
「…っ、華永野と呼びな。俺は遊男、亜簾様は客だ」
「A」
亜簾は構わず、A、A、と呼び続けた。Aは顔を逸らして、亜簾を睨み付けた。
亜簾は、見たことがないAに顔がにやけていた。Aはそれを見て、むすりとした。
「アンタは俺の*
*情夫:恋人。間夫とも言う。
亜簾は、何処か余裕のある笑みでAに近付き、耳元で囁いた。
「なら、俺のモンなればいい」
「…っ！」
Aを目を丸くして、亜簾を見詰めた。亜簾はそれを見て満足していた。Aは今、余裕がない。自分のことを考えている。と、気が上がっていた。
「亜簾様、自分の言葉の意味わかってんのか？」
「本当のこと。俺は本気だ」
Aは顔を伏せた。今、亜簾の元に身を置けばこの鳥籠の中から逃げられるかもしれない。だが、この吉原で自分が幸福を得ていいものではない。こうなることは、薄々感じていた。それが少し早かっただけのこと。吉原に身を置く遊男に愛や恋という感情は断ち切るべきだった。
何を迷う必要があるか。男同士に何を求める。自分は幸せを望んでいい者ではないのだ。
この男は遊男になど構わず、そこらの娘と交わうほうが正しい。
Aは落ちた煙管を拾い、台にことん、と置いた。そして、口角を上げて、亜簾を誘惑するように頬に手を添える。
「断る。ここで見るは一夜限りの夢。ここにあるのは、偽りの愛のみよ」
亜簾は、目が離せなかった。Aの小さく震えた指の熱がじんわりと伝わる。
亜簾は、自分がAに振られたことを理解した。何も言えなかった。
「亜簾様、気は嬉しい。
また来てくれよ」
「坊っちゃん」
Aは気を紛らすために、亜簾をふざけ混じりに呼んだ。亜簾は、ははっと渇いた笑いを溢した。
「誰が坊っちゃんだ、可愛くねぇ遊男」
それから、亜簾はAと、呼ぶことはなくなった。
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Ria。(プロフ) - 初めて見たのですが、、ッ好きすぎます。尊すぎます。こんな尊い小説があってもよろしいのでしょうか。ええ、もちろんあってよろしいです。この素晴らしい小説に出会えて良かったです！！ (2022年4月29日 18時) (
レス) @page46 id: 6d33a476b4 (このIDを非表示/違反報告)
大手裏剣(プロフ) - 藤雲ルアリナさん» あああ！お喜ばれる小説を書けていたようでとても嬉しいです！やる気でますね……頑張りますね！ (2020年4月8日 15時) (レス) id: fe109e5f3f (このIDを非表示/違反報告)
藤雲ルアリナ - 世界観、空気、文体、ストーリー、もう何もかも好みです！毎回更新楽しみにしてます！ (2020年4月8日 0時) (レス) id: 3165ea2c89 (このIDを非表示/違反報告)
大手裏剣(プロフ) - 氷浦メグさん» ひえぇっありがとうございます泣 これからも暇潰しにでも覗きに来てください… (2020年3月13日 17時) (レス) id: 54569fedb3 (このIDを非表示/違反報告)
氷浦メグ(プロフ) - 初見です。尊いですありがとうございます！ (2020年3月13日 13時) (レス) id: 3357bae399 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：愛之助
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/oh19years/
作成日時：2019年2月16日 22時
