…6 A tear ページ6
桜side
会社の非常階段をトントンと降りてると、とある階数から偶然聞こえてきた世間話。
??「ねぇ、青い鳥のアプリ見た？ジャニーズwest、今年の年末の歌番組落ちたらしいよ。」
??「あぁ見た見た！あんなにドラマや音楽、舞台も頑張ってたのにねぇ。なんで選ばれないか不思議。」
??「ホントそれよね。」
やがて話し声は遠くなる。
え？年末の歌番組？って、あれだよね。
私は、持っていたクリアファイルを台座にポケットにいれてたスマホを開いて青い鳥のアプリを開く。
トレンドには「ジャニーズwest」の文字。
震える手で、タップする。
そこには、年末の歌番組の投稿がトップに躍り出た。
恐る恐るタップして、一覧表を見る。
「…居らん。」
なんで？なんで？なんで？？
あんなに頑張ってるのに、あんなに最高の曲を世に出してるのに！！！
「なんで居らんねん！！」
何度も何度も指でスクロールをして、一覧表を見返しては無い事が、夢なのではないかと感じる。
ここが会社じゃなければ、スマホを投げて、ベッドに飛び込んで大声で泣いてたかもしれない。
今はそんなことできないから、そっとスマホを閉じて、スマホをギュッと握りしめて、壁に寄りかかりながら静かに目を閉じる。
現実は、甘くない。
現実から目を閉じて、真っ暗の空間の中、みんなの姿を思い浮かべる。
今年こそ、今度こそ、次こそは！！！
何度何度願って、祈って、全てを駆けて来たか。
「なんで、選ばれないの…。」
私の弱々しい声が、階段中のコンクリートの壁という空間に響き渡る。
ピコン
ラインが鳴る。
スマホのロック画面が自然と明るくなる。
明るさを眩しく感じ、ゆっくり目を開ける。
そこには、【崇裕】の文字と、
崇裕今年も選ばれんかったわ。来年こそ、頑張るから。
とだけ送られてきた。
ポロッ、と零れ落ちる1粒の涙。
こんなに頑張ってるのに彼らはいつ、報われますか？
あのステージに立つwestの皆が、私は、見たい。
それが私の、本望です。
私はあえて、崇裕へのラインは明るく振舞った。
桜来年こそ、テッペン取ろうね!!
とだけ送った。
今の私に絞り出せる言葉はこれだけ。
このやり取り、今年で何度目だろうか。
いつになったら、嬉しい報告聞けるかな？
頑張ろう、私。
頑張ろう。
「よし！ずんずんどっこ〜🎶」
涙を拭いて、気合を入れると目的の階まで階段をズンドコのリズムで降りていった。
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作者名：彩楓 | 作成日時：2021年11月30日 23時
