どうか朝には元気なきみで【完結】 (ページ4)

今日:1 hit、昨日:0 hit、合計:2,657 hit

４ページ4

部屋に着いた山陽はまず東海道の服を着替えさせた。

「今日の昼、食べたか？」

山陽の問いに東海道は小さく首を振る。
ジュニアがSOSを受けたという時間を２時から３時と仮定すると、東海道は昼の時点で既に体調が悪かったのではないか。そう考えた山陽の読みは当たっていた。

「じゃ、薬飲んで寝る前にちょっとだけ胃に物を入れような」
「いらない」

即答に山陽は苦笑した。片膝をついて下から見上げ、ベッドに腰かけた東海道の手を擦る。本人は寒いようだが発熱時に特有の熱が感じられる。

「無理にとは言わないけど、一口だけ食べてみ？嫌だったら残せばいいからさ」

柔らかい山陽の口調に東海道は少しあってコクりと頷いた。

「よし。そしたら作ってくるから、それまで横になって待っててな。」

立ち上がってキッチンへ行こうとした山陽だが、その袖がくんと引っ張られる。何かと振り向くと、東海道が手を伸ばしてじっと山陽を見ていた。その目はまるで置いていかれた子どものようだ。病気の時によくある理由のない寂しさからだろう。

「すぐ戻るよ。ここで待ってられるだろう？」

普段なら反発するだろう言い聞かせるような口調に、しかし彼は掴んだ袖を離さない。山陽を見上げたまま声を出した。

「さんよう」
「....東海道に呼ばれると、俺、弱いんだって。横になってた方が楽だろ？な？」

山陽は困惑した表情で東海道を見返す。
ともなれば熱でぼやける瞳だが、東海道は
山陽から視線を逸らさなかった。
負けたのは山陽で、はぁとため息を吐いて東海道に向き直った。袖を掴まれたままベッドから毛布を剥がして東海道に羽織らせる。しっかりと巻き付けて東海道の体を抱き上げるとようやく手が離れた。

「ほんとお前、かっるいなぁ」
「....放っておけ」

いつもの応えが返ったことに山陽はほっとする。
しかしその声はいかにも出しにくいそうなそれで、後に二つ咳が続いた。

「ごめん。喋らない方がいいよな。はちみつレモン飲む？」

山陽は東海道を抱えたまま器用に寝室のドアを開ける。暖房をつけた部屋より寒い廊下にでると、東海道はふるりと体を震わせた。山陽は腕の中を見る。

「やっぱ、ベッドに戻るか？」

東海道は頷くのと首を振るのを一回ずつした。