苺おいしい/ht ページ48
・
季節は冬となり、苺がおいしい時期となってきた。
家庭菜園でやっていた苺もついに実り、収穫を今か今かと待っていた。
ひとらん曰くもう少し先らしいが、いくつかは熟れているから採っても良いとのこと。
だから、赤く熟れている苺を収穫した。
軽く水をかけて汚れを落とす。
水滴がきらきら光っていて、とても美味しそうだった。
思わず一つ手にとって口に入れてしまうのは、仕方のないことだ。
しかし勝手に食べた罰があたったのか、私が口にしたのは傷んでいたらしい。
「うえっ」
素早くティッシュを抜いて、傷んだ苺を口から吐き出した。
ティッシュに染み出した赤が、血を吐いたようだった。
「ただいまー」
ドアの開く音とひとらんの声が聞こえる。
リビングにきたひとらん、手に赤く染まったティッシュを持った私。
ひとらんの目線は私の手。
さっと隠したが、遅かったらしい。
「どうしたの……？」
「いや、なんでもない」
「何でもなくないよね」
「本当に何でもないから」
血だと思われるのもいやだが、何より避けたいのがこっそり苺を食べたのがバレること。
一緒に食べるって約束したのに……。
「口元、赤いよ」
「えっ」
反射的に口に手を当てる。
手を見てみれば、少しだけ赤く濡れていた。
「怪我したの？」
心配そうに訊いてくるひとらんに罪悪感が募る。
「いや……大したことじゃないから。大丈夫」
「一応口の中見して」
「本当に大丈夫だから！」
ひとらんは聞く耳を持たずに、私の口を無理やり開ける。
「……怪我はしてないね」
「ひっははん」
「なんて？」
言ったじゃん。
「じゃあなんでそんなに隠すの」
「いや……その、ごめん」
もう無理だ。観念して正直に全部白状した。
話を聞き終わったひとらんは、はあ、と息を吐く。
「怪我じゃないなら良かったよ」
「怒ってない……？」
「怒ってないよ。でも心配したんだから、もうやめてね」
「はあい」
その日の夜のデザートは、今日収穫した苺でした。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 745人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
スイ(プロフ) - 脳内お花畑さん» スイさんは神ですよ←お花畑さんですね！りょーかいしました！ (2019年7月6日 3時) (
レス) id: fc5840509f (このIDを非表示/違反報告)
脳内お花畑(プロフ) - スイさん» スイさん！！いつもいつもありがとうございます！もしかしてスイさんは神ですか？それとお花畑で良いですよ！ (2019年7月6日 2時) (レス) id: 999cc5b25a (このIDを非表示/違反報告)
スイ(プロフ) - 脳内お花畑さんの作品他の見よーおもたらすでにお気に入り作品にしてて草← (2019年7月6日 2時) (レス) id: fc5840509f (このIDを非表示/違反報告)
かよ(プロフ) - かこつです！リクエスト答えていただきありがとうございます (2019年7月2日 15時) (レス) id: 33b10db5e5 (このIDを非表示/違反報告)
脳内お花畑(プロフ) - ベリーさん» なるほど！察しが悪くてすみません…！私も昔見てましたよ、かわいいですよね〜。多分主はNo.6ちゃんのようなことはしないと思いますけど…。萌え禿げたのならエミさんのお話を見ましょう！そうしましょう！ (2019年6月30日 0時) (レス) id: 999cc5b25a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：脳内お花畑
| 作成日時：2019年5月31日 19時
