最後の恋 (ページ47)

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お風呂から上がると翔くんに言われたように目元を濡らしたタオルで冷やす

「眠くなったら先に寝室行ってて良いからね？」

自分がお風呂に行く前、翔くんはそう言ってた

何度かタオルを濡らし直して、目元が落ち着いて来ると今度は泣いた疲れからか眠気が襲ってくる

寝室に入ると、朝出掛けたままの状態なのか翔くんが起きた時のままだった

『どんだけ慌てて起きたの？』

思わず笑みが漏れてしまう

きっちりしている翔くんからはイメージ出来ないようなベッドの状態が逆に翔くんの人間味を表している気がする

布団を整えてそこに潜り込むと翔くんに包まれているような気がして安心した

誰かにゆっくりと髪を梳かれている感覚で意識が浮上する

いつもは目が覚める時はまだ寝てたいとすぐに目を閉じてしまうのに、スッキリとした目覚めですごく気分が良い

目を開けた先には翔くんがいて、優しく微笑みながらこっちを見ていて照れてしまう

本当に優しく笑っているから、こっちまで笑みがこぼれてしまう

「かわいい」

当たり前みたいに照れもせずに翔くんが口にした言葉

その言葉に本当は嬉しそうに言われ慣れない言葉に照れてしまって、翔くんの視線から逃げるように体を横に向ける

「なに？

なんで逃げんだよ」

『だって…恥ずかしぃ』

「目、重い感じする？」

『う～ん、しないよ？

すごいスッキリしてる』

「見た感じも腫れてないし、もう心配ないな」

『うん、良かった』

「……」

『……』

翔くんはベッドに腰掛けてる状態でお互いに背中を向き合わせていて、何とも言えない静かな空気が流れていく

翔くんもこの空気を持て余しているのか、1度だけ口を付けただけのミネラルウォーターが入ったペットボトルを何度も握っては離してを繰り返している

『なんか…意外』

「なにが？」

『イメージだと、翔くんはお風呂上りはバスローブ着てそうだったから』

そう、わたしの中での櫻井翔という人は完全にそういうイメージだった、だから今、TラフなTシャツにスウェットを履いただけの姿が不思議

「ふっバスローブなんか着ねえよ」

『持ってすらないの？』

「持ってはいるよ、コンサートの楽屋で着たりすんの」

『ふぅ～ん』

そうやってバスローブ着て、女性のスタッフに色気振りまいてるんだろうな

翔くんの場合は計算じゃなくて完全に無意識なんだろうけど