最後の恋 (ページ45)

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勝ち得た信頼ページ45

Aから電話が掛かって来るなんて、付き合ってから初めての出来事で、自分の携帯に表示された名前に思わずテンションが上がった

でも、電話に出てみるとAは泣き始めてしまって、何があったのか見当もつかなくて、ただオロオロしてしまう

「どうした？何かあった？」

『翔くん、』

「うん、どうした？」

Aの泣き声を携帯越しに感じながら、俺なんかしたか？と自分の行いを振り返ってみる

だめだ……全然、分かんねぇ

『…会いたい』

泣いてる原因は何だと必死に頭ん中で考えていると、本当に振り絞るような小さな声でAが口にした

たった一言、

でも、今まで口にしなかったAの本音だと思った

俺だって会いたい、〈今度〉なんていつになるか分かんねえだから

「…うち来れる？」

自分の彼女が泣いてるのに、自分で迎えに行ってやれない悔しさが心に渦巻いていく

あの様子だとまっすぐうちに来るんだろうけど、病院からうちまでの距離を知らねえから、あとどれぐらいで着くのか予想がつかない

女の子に夜道を歩かせるなんてと思うけど、俺が迎えに行く方がAにとって迷惑になる

やっぱり迎えに行こうとソファから立ち上がる度にそう自分に言い聞かせて思いとどまる

目の前のテレビもただ流れてるだけ、内容なんかこれっぽっちも頭に入って来ねえ

「…A」

いつ来るかと玄関にばかり気をやっていたからか、玄関のオートロックが解除される電子音が聞こえた

慌てて立ち上がって玄関まで迎えに行く

「A？」

『しょうくん！』

久しぶりに見るその顔は泣くのを必死に堪えてるようで、何かあったんじゃないかと不安が過ぎる

「どうした？なんか怖い思いした？」

こんな異常にセキュリティーの高いマンションに住んでるのだって理由がある

記者だけでなく、中には過剰な行動に出る人たちだっている

まさか何かされたのかとAの腕や顔を覗き込んで怪我ないか確認する

「誰かに追い掛けられたの？

何かあったの？」

「怪我してない？」

俺の問いかけにもAは胸に顔を埋めたまま首を横に振るだけ

まぁ、とりあえず怪我ないなら良かった

両腕をしっかりとAの背中に回して、ゆっくりと上下に摩る

「良かった、

もう大丈夫だよ、大丈夫」

何が原因で泣いてるのかは分かんねえけど、怪我や怖い思いをしたんじゃないのなら、俺も話をゆっくり聞く余裕が出来る