最後の恋 (ページ41)

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研修医「はい」

西島「吸引、吸引しろ！」

研修医「は、はいっ」

筋鉤を引くので精一杯の研修医は自分で考えて動くなんて無理、

アシストしながら器械を渡していくけど、手が足りない

バッと大和の方を見るけど、手の空いている外科の先生が見つからないみたいで、PHSを耳に当てたまま首を横に振る

他にこの状況に対応できる外科医…誰か…誰か

部長「ドクヘリ症例か…派手にやられたな、受傷起点は？」

ゆっくりとした足取りで部屋に入って来たのは外科の財前部長で、いつもはニコニコして優しい雰囲気を出してるのに、

今日は外科部長の威厳を纏っている

岡野「トラック対歩行者の交通事故で、歩行者側です！」

財前部長「どんな感じだ？」

西島「…FAST陽性でした、肝損傷でヘリ内でVF起こして蘇生しました」

財前部長「おーい、大和、ガウン着せてくれ」

岡野「あっ、はい！」

突然入って来た外科部長に大和もわたしも驚きを隠せない

この時間はいつも部長会議を開いているから、誰も電話しない

なのに部長がどうしてここに？

三浦「財前先生来た？

あー、良かった！先生、来てくれたんだ」

財前「三浦くんに呼ばれたら会議抜け出しても来るよ」

『大丈夫なんですか？』

財前「俺なんかいなくても会議は出来るだろう、

そもそも外科医はオペはしたくても、会議は出たくないもんな？西島」

西島「……」

今まであらゆる会議をバックレてきた西島先生を見ながらニヤニヤしている

財前部長「研修医、前立ち(第一助手)代わってくれ」

オペ開始から10分経ってようやくスピードが上がり始める

財前「どうだ、見えるか？」

西島「出血が多すぎます」

麻酔科医「赤(輸血)来たか？」

岡野「いま届きました！赤血球と血小板10単位ずつ来てます」

麻酔科の研修医に輸血パックをポンピングしてようやく血圧を50mmHg台に保ってるのが現状

出血源を処置しない限りは助からない

財前「ここだ、ここ吸引してくれ。

肝臓少し持ち上げるよ」

ここにいる全員が救命できないという現実が頭を過ぎっている中で、一人だけ冷静に術野を見て指示を出す

研修医の右手を引いて、吸引チューブを血溜まりに突っ込ませた

左手で肝臓を掬い上げて、ギリギリまで持ち上げる

いつもは見えない位置に肝臓が見える、

同時に損傷部位も見えた