最後の恋 (ページ40)

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髪の毛の細さ程の針糸や、特殊な鉗子、大量出血に備えたガーゼを準備して、あとはわたしが手洗いをして細かい準備に移ろうというタイミングで

三浦「緊急患者、入ります！」

聞こえて来たのは手術室全体に響いた三浦さんの一斉放送

『え、もう？』

予想外に早い入室に驚いていると、ストレッチャーの音とバタバタという足音が聞こえて来る

Flight Dr「5分前にヘリ内でVF、アドレナリン1A使って、除細動で洞調律」

岡野「挿管チューブいくつで固定ですか？」

Flight Ns「口角23cmで固定してます！」

岡野「先生、CV(中心静脈カテーテル)どうする？」

麻酔科医「頸静脈から入れる、挿管チューブはそのまま使おう」

すごい勢いで通るストレッチャーに1.2年目の看護師はその場から動けずすくみ上っている

雰囲気を見れば分かる、1分1秒の猶予もない

本当なら器械出しも入室を手伝わないといけないんだけど、これは手伝っていると、流れるように始まる執刀に間に合わなくなる

『大和！』

入室を手伝えない事を伝えようと集団の最後尾にいる大ちゃんに呼びかける

岡野「こっちはいいから、早く手ぇ洗え！」

お互いに小さく頷いてから、大和は7番手術室へ、私は手を洗ってガウンを着る

器械台の準備をしている暇はないと判断して、必要最低限の物だけ揃てて、7番の前に行く

西島「器械出し誰！？」

岡野「Aだよ！」

『わたしです』

ちょうど部屋から出て来た西島先生が大和に器械出しを確認しようと振り返ったところでドアが開く

大和もバタバタの入室＋患者の容体が悪いからテンションが上がって口調が荒くなってる

『いつでも準備出来てますよ、どうぞ』

西島「手洗ってくる、肝臓摘出になる」

『分かりました』

西島先生たちが部屋から出て行くと同時に大和が患者の腹部にボトルごとイソジンをぶちまける

3分もしない内に西島先生が手洗いを終えて戻って来るけど、研修医は慌て過ぎていつも出来てる事が出来ない

西島「ドレーピング」

『はい』

研修医は待たない主義の西島先生はチラっと目の端で確認すると、片方はわたしが持ってドレープを患者に被せる

西島「タイムアウトは」

麻酔科医「超緊急だからパス！、早く開けて止血しろ！」

西島「じゃあ、メス！」

『はい』

研修医「すいません、遅れました」

『この筋鉤をこの位置で引いてください』