最後の恋 (ページ33)

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「後でね」と言って先に店を出た翔くんを見送るとようやく自分の状況を実感し始める

翔くんの自宅に呼ばれたのは嬉しいけど、こんな展開になるとは思ってなかったから何の準備もしてない

翔くんから送られたメールにある住所は、歩くには遠い距離で、お店の近くのコンビニで必要な物を買ってからタクシーを拾う

タクシーの運転手さんに住所を伝えるとゆっくりと車が走り始める

♪

〈どれぐらいで着く？〉

『すみません、どれぐらいで着きますか？』

運転手「大体15分ぐらいですかね」

『ありがとうございます』

≪15分ぐらいで着くみたいです≫

〈地下の駐車場に止まるように言って、着く頃に降りて待ってるから〉

運転手「住所だとこのマンションですねぇ」

『えっと、地下に駐車場があるのでそこで降ろしてもらえますか』

ゆっくりと地下へ続くスロープを降りると、広い駐車場になっていて誰かが立っているのが見える

運転手「ここで良いですか？」

『はい』

降りる準備をしているといつの間に歩いてきたのか翔くんがドアの近くに立っていて、

「俺が払うから、A降りて」

言葉短めにそれだけ言うとわたしの腕を引いて、支払いを済ませてしまう

『ありがとうございます』

「俺が呼んだんだから当たり前でしょ、

それに女の子にお金出させない主義だからね」

サラっとかっこ良い事を言ってスタスタとエレベーターの方に歩いていく

翔くんがカードキーを差し込んでボタンを押すと扉が開く

『地下に駐車場があるのもすごいけど、エレベーターまであるんですね』

「そういうマンションだからね」

何て事ない風に言うけど、今乗ってるエレベーターだって綺麗だし、このマンションの家賃なんてびっくりするぐらい高いんだろうな

「何買ったの？」

翔くんの視線がコンビニの袋に向けられている

『メイク落としとかと…お茶ぐらいかな』

「あ……そうか」

翔くんがいま気付いたみたいに言うから、少しの不安が過ぎる

もしかして翔くんの家来る？っていうのは遊びに来るみたいな意味でお泊りするって意味じゃなかったのかも

絶対そうだよ、よく考えてみたら付き合った初日にお泊りする？そして誘われたからって行く？

「俺がAちゃん家に行けば良かったね」

『えっ？どうして？』

「女の子の方が必要な物が多いじゃん、そこまで気が回らなかった、ごめん」