最後の恋 (ページ25)

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Ns「他に何か要る物ありますか？」

器械の準備を手伝ってくれている後輩に『そこに針糸、全部開けてくれる？』と頼んで受け取っていく

Ns「先輩、準備間に合いますか？」

『間に合わないね～』

正直言って、5分前に準備を始めたから、今ERから上がってくると全然間に合わない

でも

『間に合わないから待ってください、なんて言えないでしょ』

Ns「すごいですね、私はとても、こんな緊急、出来る気がしません」

『まぁ、経験だよ、経験』

廊下が騒がしくなってストレッチャーの音と無数の足音が聞こえてくる

研修医「血圧54mmHgです！」

Dr「血圧下がってんだからポンピングして輸液押し込めよ！」

Ns「昇圧剤、トータルでいくつ入ってんの？」

…盛り上がってますね

岡野「A、8番！もう来ていいよ！」

後ろからストレッチャーを追い掛けるように走って来た大和がこっちを向いて叫んでから8番手術室へ入っていく

器械台を押して、部屋に行くともう部屋の中は…すごい事になってて

誰が何をしてるのかパッと見では分からないくらいの人だかり

麻酔科医「よし、挿管した、いいよ！」

心外Dr「消毒します」

普段は専用のスポンジを使って消毒するけど、心外の超緊急オペでそんな悠長な事をしている余裕はない

だから

大和が勢いよくイソジンが入ったボトルを患者の胸部にひっくり返す

心外部長「準備は？」

『いつでもどうぞ』

手を洗い終えた部長が隣に現れて、ちょっと驚いたけど、顔には出さない

部長「スタンフォードA型解離に対して、バイパス術します、メス！」

三浦「A、助かったわ、代わるよ」

執刀開始から3時間ぐらいが経過して、ようやくオペの目途が見えてきた頃、三浦さんが交代に来てくれた

『他の部屋は終わりそうですか？』

三浦「もうここが最後だから、残ってくれて助かった、ありがとな」

三浦さんに交代してもらってガウンを脱いで、時計を見て驚いた

『…もう20時なんだ』

岡野「もっと長い時間働いた気分だよ」

同じように夜勤Nsに交代してもらった大和がげっそりした顔で隣に立つ

『たしかに…明日が休みで良かったー』

岡野「もう明日仕事だったら、起きれねえ、俺」

『もうお腹空いた、眠い、5分で寝れる』

岡野「ホント？俺、1分で寝れるよ？」

お互いに相当疲れてる