最後の恋 (ページ17)

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三浦「おお！A！

お前、生きてたんだな」

師長「なんて事言うの！」

『あははっ、まだ生きてますよ～』

三浦さんはわたしより5歳上の先輩で、わたしがオペ室に入った時に教育係をしてくれた先輩でもある

あの頃は目の前にいる三浦さんが怖くて怖くて仕方なかった

自分が悪いんだけど、毎日怒られて、一目につかない廊下で泣くのは日常茶飯事で、

口癖のように言われた事は「指示されるのを待つな、自分で考えろ！」

あの指導のおかげで今があるし、自分で考えて行動するという基本を三浦さんが身に着けさせてくれたから、今回の派遣で自分の意見を持って行動することができた

三浦「まぁ、でもさすがにちょっと痩せたな」

『そうですか？』

向こうには体重計なんて物は存在しないから、どれぐらい減ったかなんて分からなかった

三浦「今日、なんか予定あんの？」

『ないです、これから家帰って、必死に洗濯します』

三浦「今日は…あっ！大和も日勤じゃん、ちょうど良い、今日飲み行くか？」

『良いんですか？ありがとうございます』

三浦「財布係で誰かドクターも連れて行こう」

『ふふっ財布係って』

笑っていると三浦さんの胸ポケットに入っていたリーダーPHSが鳴る

三浦「A、日勤終わるくらいに連絡するから！

はい、オペ室の三浦です」

軽く会釈してからオペ室を出ようとすると、ウィンと扉が開いて中から大和が出て来る

岡野「あれ、A！？」

『大ちゃん、ただいまー！』

岡野「良かった、生きてる！」

術中に急遽必要になった物を取りに出て来たのか、走りながら器械室に向かう背中に向かって

『今日、三浦さんが飲みに行こうってー！』

岡野「行く、行くー！」

相変わらずの大和を見て思わず笑ってしまう

『ただいまぁ』

3ヶ月ぶりに帰って来た1人暮らしのマンションはシーンとしていて、でも、ようやく『帰って来た』と感じる

2週間に1回ぐらいのペースで父が風通しをしてくれたおかげか、空気がこもっているような感じはしない

テレビとかラックには3ヶ月留守でしたって感じの埃があるけど、1日掃除すれば元に戻る程度で済みそう

ベランダの窓を開けて、空気を入れる

スーツケースを開けて、荷物を出して、洗濯機に入るだけ入れたけど

『これは2～3回しないと終わらないなぁ』

久しぶりにゆっくりとした空気が流れている