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昨日、智くんからしばらくパパ帰って来ないんだよと説明された後は「あい♪」と100点満点の右手の上げ方をしてたけど、やっぱり説明の内容は分かってなかったみたいで
「いや”−、パァパ―、パッー」
智くんとわたしの様子から「いつもと違う」と雰囲気を感じ取ったのか、朝食の途中から大泣き
迎えの時間が迫ってる智くんはバタバタと寝室とリビングを行ったり来たりして、とてもじゃないけどあきに構っている余裕はなさそう
いつもなら泣いたらすぐに構ってくれるパパが来てくれないから、あきの機嫌は最悪の状態で、ついにはヨーグルトを食べるために握っていたスプーンを床に落とした
必死にパパの方に手を伸ばすけど、残念ながらパパは今それどころじゃないんだよ
『ほら、あきくん、ヨーグルト食べよう? あーんして?』
「やっ! パパ!パパー」
いつもなら泣いてても『ヨーグルト』という単語を聞いただけでピタっと泣き止むのに、今回はヨーグルトよりパパの方が優先順位が高いらしい
「怜理!」
『時間?』
「ん、もう下でマネージャーが待ってるから」
『分かった、あきくん、ママと一緒にパパにバイバイしよっか』
「あっ、パパ、パパ!」
ここで智くんに渡すと離れないのが目に見えてるから、わたしが抱っこして玄関まで連れて行く
「何かあったら、すぐ連絡して?」
『うん、わかった」
「…何もなくても電話して」
『ふふっ、はぁい』
「冗談じゃなくて、怜理」
『分かってる、智くん、向こうに着いたら電話してね』
「うん、
あき、良い子で待ってるって約束したよな?」
「パパ――、ダメのー、パァ――」
このまま行くしかないねと思っていると
「やっぱ、ちょっとあき抱っこさせて」
『はい』
「うっ、ふっ、うー、パァパ」
泣きじゃくるあきをギュっと抱きしめて、あきに顔を近づけて、智くんはゆっくりとした口調で話し始めた
「あき?
パパがいない間、ママのこと頼むよ。
智明しかいないんだからな?」
「グスっ、うぅ」
「頼んだよ?」
「あい!
……ママとこ行くの」
しがみついていた両手をこっちに伸ばして、抱きついてくる
「じゃあ行ってくるよ」
『行ってらっしゃい、んぅ』
最後に智くんから唇を重ねて来て、あきくんの頭を数回撫でて智くんは家を後にした
パタン
『パパ行っちゃったね』
「んぅ…」
涙を必死に我慢する背を撫でながら、あきを抱っこしたままリビングへと戻った
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作者名:water lily | 作成日時:2017年11月12日 23時