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咄嗟に握りしめた右手をゆっくりと開きながら、自分に言い聞かせる。
大丈夫よ、落ち着いて。
耕作は今日 ヘリ担当じゃなかった。
昼間にフライトスーツを着ている白石に会ったし、今日のヘリ担当は白石だと確認もした。
万が一 耕作が巻き込まれてたら、たとえオペ中でも わたしに連絡がくる…
加賀美「ヘリ、着陸失敗したけど、スタッフに大きな怪我は無かったって。」
一気に力が抜けるのが分かった
『先にそれ言ってよ。』
無駄な心配した、もう。
加賀美「その症例に大動脈断裂の患者がいたらしくてっさ。ヘリがちゃんと着陸できて、患者乗せて 病院に運べてたら、助かったんじゃないって話になってるらしい。」
『無理でしょ。患者に接触した時点で、大動脈断裂を起こしてたら、ヘリで運んだって間に合わないわ。』
霧島「うちの医局員は みな その考えのようだな。」
後ろから声がして振り返ると霧島部長がいた。
加賀美「調査委員会とかあるんですか、やっぱり？」
霧島「そうらしいな。大動脈断裂での救命率を提示して欲しいと言われた。どれぐらいだと思う？」
『開胸のオペ中に併発したなら、まだ手はありますが、院外でとなると…0%でしょうね。』
加賀美「俺もそれが妥当だと思います。」
霧島「それ聞いて安心したよ。
もし お前たちが自分が行けば助けられた なんて言ったら、自分を過信するなと説教しようかと思ってたからな。」
霧島先生は、そう言うと自分のマグカップにコーヒーを注いで出て行った。
加賀美「説教って…俺たちもうフェローじゃねぇっつうの。」
そうボヤいた加賀美も今日はもう上がりなのか医局を出て行った。
ー 藍沢家 ー
珍しく救命からのコンサルのなかったから、夜は当直医に任せて、18時には家に着くことができた。
でも、救命医の耕作はそうはいかないのか 時計の針が20時を示してもまだ帰って来ていない。
『先に食べちゃおうかなぁ』
そろそろ空腹を自覚し始める時間帯になってきた
1時間ほど前に作ったお味噌汁を温め直そうとソファから立ち上がると同時に
ガチャッ バタンッ
玄関の方で音がして、ちょうど彼が帰って来たのが分かった。
『おかえりなさい。ちょうど今 食べようと思ってたところなの。タイミング良かったね。』
「そうか。待ってたのか？遅くなって悪かった。」
時計を確認して耕作が謝ってくれるけど
『今日は早い方じゃない？準備しておくから、着替えてきて？』
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作者名：water lily
| 作成日時：2017年11月11日 16時
