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ym side
俺の次に親友の知念が歌っているにも関わらず、俺は向かい側の席に座る伊野尾ちゃんに釘付けだった。
綺麗だなぁ。
可愛いなぁ。
知念の方しか見ていなかった伊野尾ちゃんだけど、水を飲もうとしたらしく、一瞬こちらを見た。
目、合っちゃった。
嬉しくて胸がドキドキとなる。
その瞬間、伊野尾ちゃんは何を思ったのか、ごくごくと勢いよく水を飲み、むせてしまった。
「ちょっ、大丈夫!?」
隣の子が聞いたのが見えたけど、俺は動き出していた。
背中をさする俺に、びっくりする伊野尾ちゃん。
びっくりしながらも、相変わらず咳込んでいる。
「っケホッ、ふぅ」
何か声をかけないとと思い、とりあえず思いついたことを言った。
「大丈夫?落ち着いた?伊野尾ちゃん」
さらに目を丸くする伊野尾ちゃん。
あ、伊野尾くんって言うべきだったかな。
「ぁ、俺の、名前…?」
うんうん!
頭では話せたことが嬉しすぎて今すぐブンブンと頷きたいけど、冷静そうに心がけた。
「あ、今歌ってるやつ、知念っていうんだけど、俺の友達で、その子が教えてくれたんだよね、伊野尾くんの名前。伊野尾くん、結構有名人だから。
知念がさ、『伊野尾』だからいのちゃんだね!って言うもんだから、俺も伊野尾ちゃんって言っちゃった!
あのさ、これからも、伊野尾ちゃんって呼んでいい?」
最後はダメ元。
こんな距離の詰め方って、引かれたってしょうがない。
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作者名:take a walk | 作成日時:2022年5月9日 18時